「X」にてアンケートを実施させていただきました。結果、今回の記事は「ベスト・キッド」シリーズについての記事となります。
ご協力いただきました皆様ありがとうございました。
80年代映画の中で、少し異彩を放つ作品ではなかろうかと思います。
時代考証などを踏まえて、読み取ってみたいと思います。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
1984年公開のジョン・G・アヴィルドセン監督作品。
原題は「The Moment of Truth / The Karate Kid」。
いじめられっ子が沖縄出身の謎の老人にカラテの手ほどきを受け、気が付くと強くなっていたという、エキゾチックでメッセージ性の強い作風が人気となり、シリーズ化。
2018年から、1作目から34年後の設定のドラマシリーズが配信されました。
「ベスト・キッド」
カリフォルニアに引っ越して来たダニエルは、同じハイスクールに通う美少女・アリに恋をした。しかし、恋敵のジョニーはカラテの高校生チャンピオンで歯が立たない。ダニエルはカラテの達人である日系人・ミヤギの元でカラテの特訓を受けるが…。
Filmarksより引用
「ベスト・キッド2」
ダニエルを空手チャンピオンに育て上げたミヤギの元に、故郷の沖縄に住む年老いた父親が危篤との報せが届く。ミヤギはダニエルを連れて沖縄へ。そこで2人を待ち受けていたのは、ミヤギに遺恨を抱き続けているかつての親友・サトーだった。
Filmarksより引用
「ベスト・キッド3/最後の挑戦」
ダニエルとミヤギに完敗し復讐に燃えるコブラ会は、カラテの反逆児・マイクを刺客として差し向ける。ところが、ミヤギは「勝つためのカラテは教えない」と言う。そんなミヤギに反発するダニエルの前に、「相手を倒すカラテを教えよう」と言う男が現れる
Filmarksより引用
「ベスト・キッド4」
カラテの達人・ミヤギが出会った女子高生・ジュリー。両親を亡くした彼女の心は寂しさから荒み切っていた。そんなジュリーにミヤギはカラテを教え始める。一方、学校では暴力的な自警団が幅を利かせていた。一味の卑劣な行動に、ジュリーは戦いを決意する。
Filmarksより引用
「ベスト・キッド」(2010)
父を亡くした少年・ドレは、母親に連れられ中国・北京へと移り住むことに。カンフー少年のチョンたちにいじめられ続けていたが、ある日、彼はアパートの管理人・ハンに助けられる。ドレは、カンフーの達人であるハンに教えを請い、修行に励むようになる。
Filmarksより引用
「コブラ会」ドラマシリーズ
人生を変えた因縁の大会から30年以上経った今、永遠のライバル、ジョニーとダニエルが再び火花を散らす。名作映画「ベスト・キッド」の続編シリーズ。
Filmarksより引用
1984年はロスアンゼルス・オリンピックが開催され、アメリカも日本も好景気へと沸き立ってきていました。
結果的に利益優先主義が横行するようになり、そのために人間性を排する事も辞さない雰囲気が蔓延していました。
つまりこれが「いじめ」に繋がっていく訳なんです。
理不尽な「いじめ」は良くないという事は誰しもが理解している事ですが、他者を落としめることで辛うじて自分の優位にしがみつく人は増えました。
社会では人種差別、格差差別、など、人々は「見下すための理由」をでっちあげ続けます。
結果的に優位性を得るためならば、どんなことをしてもいいという理屈と、より多くやった者・奪った者が勝ちという空気が醸成されてしまいます。
そこでこの作品は「いじめは良くない」という事をストレートに見せ、力に力で対抗することは新たな衝突にしかならないという事を訴えています。
「いじめに負けず、しかしやる時には臆さずにやる事が出来るように備えよ」
これがこの作品のメッセージなのだと思います。
ダニエルさんはミヤギに床磨き、ワックスがけ、ペンキ塗りなど、カラテを身につける練習とはまったく関係ないことを言いつけられてうんざりしてしまいます。
しかし、これこそが基本の動きを身体に覚え込ませるための反復練習だったのです。
何だか分からないうちに、身体に覚え込ませた動きでカラテの基本技がマスター出来ていたわけです。
何を考えているか分からないアジア人がなんともエキゾチックで、合理的で、不思議な体験をさせてくれます。
また、これは練習すれば、ダニエルさんの様に腕力が弱くとも、ミヤギのように背が低かろうとも、誰でもが「カラテ」という神秘のマーシャル・アーツを修得できるかもしれないという夢まで見せてくれます。
また1970年後半から始まったカンフーブームにのって、少林寺の不思議な訓練方法などが映画などで紹介され(アイディアとして考え出されたものも含む)、その流れを汲んでいるものと思われます。
エキゾチックなアジア人と不思議な訓練法、いつの間にか力を手にしている不思議。魔法のようなのにそこにちゃんとした理屈が潜んでいるというのが、ワクワクするんですよね。
宮城成義(みやぎせいぎ)ことミスター・ミヤギ役のノリユキ・パット・モリタは「ベスト・キッド」の世界的ヒットで日本でも有名になりました。
彼はもともと宇宙産業のロケット・エンジニアでしたが、コメディアンに転身してその後役者に。
日系2世として生まれた彼は多くの日系人と同じように第二次世界大戦の際には収容所で生活していたそうです。
この時の経験が、ミヤギが従軍経験という過去を持つというところにうまく反映されています。
さらに、ミスター・ミヤギ役は当時、「世界のミフネ」と言われる三船敏郎に何度もオファーされていたそうですが、断られてしまったのだそう。
そこでノリユキ・パット・モリタが採用されたのでした。
「コブラ会」では2011年にこの世を去ったという設定になっています。死後もダニエルの心に残り続け、ダニエルの過去の回想シーンで登場します。『ベスト・キッド』の映像がリマスターされて使われることが多いです。
これは2005年にノリユキ・パット・モリタが73歳で亡くなったからです。
ジュリー役のヒラリー・スワンクは、この作品で初主演だったが、今一つヒットせず、この後の出演作品も振るわない時期を過ごします。
「ボーイズ・ドント・クライ」で演技力の高さが評価を受け、アカデミー主演女優賞を含めて20以上の映画賞を総なめにしました。
その後、「ザ・コア」などに出演し、主演の「ミリオンダラー・ベイビー」で2度目のアカデミー主演女優賞を受賞し、再評価されました。
シリーズ唯一の女性主人公なんですが、ちゃんと「ベスト・キッド」していて違和感は全くなかったです。
その後の評価が示すように彼女の演技が良くて、悩んだり、ヤケになったりするとこなどなかなかいい感じです。
何よりも笑顔が非常にキュートで、むすっとした表情から笑顔になると、画面が明るくなるように感じます。
1作目と4作目をモチーフとして、カラテではなくカンフーに置き換えてリメイクしたのが今作の特徴です。
主演はウィル・スミスの息子ジェイデン・スミス。
そしてこれが目玉となる彼にカンフーを手ほどきする師匠として、ジャッキー・チェンが出演しています。
もちろん、ジャッキーアクションここにあり!です。
キャストの豪華さだけに目が行きがちですが、元々カンフー映画のトレーニングシーンなどは、一見意味がわからないモノもあって、『ベスト・キッド』の魅力という点では共通するものがあるので、あまり違和感はないです。
「コブラ会」は1作目のラストの試合から34年後という設定で語られる物語です。
1作目でダニエルに敗れたジョニーが主人公です。
ダニエルとの戦いから、やさぐれてしまったジョニー。
偶然、不良グループに暴行されているミゲルを自身のカラテで助けたことで、ミゲルにカラテを教えてほしいと請われます。
ミゲルにカラテを教えるようになり、自身も「正しい道」に目覚め、コブラ会を再興しようと奮闘するようになります。
まあ、簡単に言って仕舞えば、悪役がいいヤツになって帰ってきた!ってやつです。
2018年より「Youtube RED」でシーズン1~2が配信開始されました。(現在のYoutube Premium)
2020年からNetflixでの配信となりました。
1作目のラストの試合シーンはあまりにも鮮烈でドラマティックです。
あの、弱弱しかったダニエルさんが脚の激痛をものともしない集中力を見せるほどに成長しています。何も臆するところなく、ただ出来る事を目一杯出し切ろうとする姿に感動してしまいます。
さらに2作目の冒頭もこのシーンから始まります。
そして、ドラマシリーズ「コブラ会」もこの試合でダニエルさんと戦ったジョニーが主人公の物語です。もちろんこのシーンがリマスターされて回想シーンとして使用されています。
2010年版を除く、シリーズ作品で扱われているのは「空手」として紹介されています。
しかも、ミヤギの出身地は沖縄という設定になっています。
この設定は「空手」発祥の地と言われているのが沖縄だからなんです。
つまり設定を考えた人々は「空手」に対してそのルーツなどからある程度の知識があった事がわかります。
しかし実際に空手を経験したり、習得している人間がいなかったのではないかと思われます。
これは細かいことを言えば、ミヤギの使っている武術は作品のための全くの創造物であるからです。
練習法もそうなんですが、基本の構え、歩法、受け技、などは空手にはないものです。
さらに1作目のクライマックスの二段蹴りも「はい!二段蹴りしますよ!」って片足で構えて待ってるなんて実際にはできません。回り込まれたら不安定な片足では対応できません。
「っぽく見せる」ということに終始した結果なんです。
でも、緊張感あるし「行け〜〜!!」ってグッと力が入ってしまういいシーンになってます。