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※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
1979年からTV放映されていた「機動戦士ガンダム」の第15話「ククルス・ドアンの島」を翻案として映画化した作品。
監督は「機動戦士ガンダム」シリーズでキャラクター原案などを務めた安彦良和監督。
安彦良和監督は「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」でシャアを中心に「機動戦士ガンダム」を語りなおしました。それに対する形で「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」ではアムロとガンダムを中心に語りなおしたいという事で映画化しました。
ジャブローでの防衛戦を耐えきった地球連邦軍は勢いのままにジオン地球進攻軍本拠地のオデッサを攻略すべく大反抗作戦に打って出た。アムロ達の乗るホワイトベースは作戦前の最後の補給を受ける為にベルファストへ向け航行。そんな中ホワイトベースにある任務が言い渡される。無人島、通称「帰らずの島」の残敵掃討任務。残置諜者の捜索に乗り出すアムロ達であったが、そこで見たのは、いるはずのない子供たちと一機のザクであった。戦闘の中でガンダムを失ったアムロは、ククルス・ドアンと名乗る男と出会う。島の秘密を暴き、アムロは再びガンダムを見つけて無事脱出できるのか…?
Filmarksより引用
先ほども書いたのですが、TVシリーズの話数合わせのエピソードとして製作された第15話のみを劇場アニメ化しています。
つまり30分枠に収めた作品、実質本編22~23分の作品を1時間48分もの長尺作品に膨らませています。
しかもマイナーな話数合わせのエピソードをです。
なぜ話数合わせのエピソードが存在するかというと、テレビ放映するにあたり話数が決められていますが、何かの原因でどうしても製作が間に合わないなどのアクシデントがあった際に、本編物語と直接関係のないエピソードを用意しておけば、穴埋めに使うことが出来ます。
そういった穴埋め用の本編に関わりのないエピソードが第15話「ククルス・ドアンの島」だったわけです。
たったひとつの、それも話数合わせのためのエピソードを映画化するというのは前代未聞の出来事です。
テレビシリーズ第15話「ククルス・ドアンの島」を映画としてリメイクしたのですが、敢えて今なぜこのエピソードのみ映画化したのか?
一言でいうと「武器を捨てれば、日常に帰れる」というメッセージがあるからです。
これは実は「機動戦士ガンダム」最終回まで通して、隠されたメッセージとして描かれているんですよね。
これはヘミングウェイの「武器よさらば」や映画「タクシードライバー」、「ランボー」などで描かれたものです。
アムロは「あなたの戦いの匂いが戦いを引き寄せてしまう」と言って最後にドアンのザクを海に投げ捨て沈めてしまいます。
武器を捨てることにより、ドアンは子供たちとの日常に帰っていくことができた訳です。
これが最終回のラストシーン、アムロがコアファイター(アムロの戦いの武器の象徴)を捨てることで
「ごめんよ、まだ僕には帰れる所があるんだ。こんな嬉しいことはない。わかってくれるよね?ララァにはいつでも会いに行けるから」
と、スペースランチの仲間たちの元に帰っていくというところに繋がっていきます。
第15話製作当初はこのエピソードは話数合わせ的なものでメッセージ性を付与して製作されたわけではなかったそうです。
しかし最終回を製作するにあたり、第15話のメッセージをもとにラストシーンを起こすことになったのだそう。
「機動戦士ガンダム」放映当初は製作スケジュールが非常にタイトで大変だったそうです。
そのため、絵柄を修正するリテイクを減らすことを余儀なくされていたようです。
結果、デッサンが狂っていたり、絵がおかしな形になってしまっていてもそのまま採用されてしまう事もあったそうです。
そして、この第15話は「作画崩壊」とまで呼ばれるほどの批判を浴びてしまいます。
安彦良和監督としてもそこは非常に心残りだったようです。
そこでリメイク版は作画などに注力して非常に美しく仕上がっています。
画像左がドアン仕様のザク、右が通常のザクのデザインです。
さらにむしろ批判の的であった作画崩壊しておかしな形になってしまったザクを敢えてドアン仕様のザクとしてキッチリデザインしなおしています。
もちろんすべての絵柄を現在の技術などをしっかりと使って描きなおすことで美しく、力強く、しなやかなキャラクター、背景、メカニックになっています。
モビルスーツたちのヌルヌル動く戦闘シーンは圧巻です!!
正直、作画が良くなっているというだけでも見る価値あるかもしれません。
ただ、戦闘シーンがもう少しだけ多くても良かったかな~。
当時、アニメの主人公の中でこれほどウジウジしたり、根暗なキャラクターは珍しい存在でした。
「機動戦士ガンダム」という物語は、そういったお子ちゃまなアムロの成長譚としての側面もあるのですが、「ククルス・ドアンの島」はまさにアムロの成長に必要な体験でした。
アムロはこの後、より激しい戦いに巻き込まれていきます。
「ククルス・ドアンの島」で「大人とは」や「大切なものを守るには」などを教わり、少し成長した状態でなければその後の戦いでは生き残れなかったかもしれません。
安彦良和が監督をするということで、今作「ククルス・ドアンの島」では「アムロとガンダム」を中心に描きたかったそうです。
安彦監督と言えば「THE ORIGIN」ですが、これは基本的にシャアを中心に描いた作品です。
「THE ORIGIN」に対しての「ククルス・ドアンの島」ということのようです。
時系列としてはオデッサ作戦の前の時期に設定されています。
アムロは「ククルス・ドアンの島」以降により激しい戦いに巻き込まれ、最終的に「ア・バオア・クーの戦い」を経て「逆襲のシャア」までにニュータイプとして覚醒・成長していきます。もちろん大人としても。
ホワイトベースに乗り込んでいるクルーにはもちろん女性もいます。
その中でアムロに直接かかわるのは、
幼馴染でカツ・レツ・キッカの3人の面倒を見ているフラウ・ボゥ
ホワイトベースを操艦するミライ
通信オペレーター兼パイロットのセイラ
と3人の女性キャラがいます。
彼女たちはアムロにとって、母親であり、姉であります。
エースパイロットではあるけど感情の起伏が激しく不安定なアムロを、時には優しく、時には厳しくうまく導きます。
まだ士官としては若く未熟なブライトが艦長をする上で彼女たちには非常に助けられているのが分かります。
セイラは気が強いように描かれることが多いのですが、今作でも遺憾なく発揮されています。
アムロを捜索するために軍法会議を覚悟でスレッガーがコアブースターの背中に自分が操縦するジムを乗せてほしいと頼むのですが、セイラはその言い方がセクハラっぽいといきなりビンタします。
ホワイトベース内の女性キャラの中で、妹であり幼馴染のフラウ・ボゥと母性のミライと違って、セイラは男性陣の憧れを受けるセクシャルなイメージも持っています。
結果、セクハラな言動を受けることもあるのですが、容赦なく怒りをぶつけるのも魅力的に映ります。
TVシリーズでもカイをぶつシーンが印象的です。
もちろん、これはセイラがシャアの妹であることによって、連邦軍に入隊するまでにけっこうな苦労とショッキングな出来事を経験してきているので、そも「成長しきれない男性」に嫌悪感に似たものを感じてしまうのでしょう。
良いのか悪いのか分かりませんが、セイラのビンタを受けたい男性ファンも多いことでしょう。
上段:「高機動型ザク(地上用)」左からダナン機、セルマ機、エグバ機、ウォルド機、サンホ機
下段:左からダナン・ラシカ(cv.林勇)、セルマ・リーベンス(cv.伊藤静)、エグバ・アトラー(cv.宮内敦士)、ウォルド・レン(cv.上田燿司)、ユン・サンホ(cv.遊佐浩二)
以上の非常に個性的で魅力的なキャラクターたちとドアンの過去にどういった事があったのか?
また、彼らはどういった部隊だったのか?
尺の問題なのか、ほとんど描かれていません。
セルマ・リーベンスとドアンの過去の関係も何かありそうでしたがほぼほぼスルーです。
もう少し欲しいところでしたね~。
オリジナルのサウンドトラックがYoutubeで公開されていました。
TVシリーズの懐かしいBGMも現代版にアレンジされて使用されていて、「ああ、ガンダムだ~!!」と安心するような、懐かしいような、ワクワクするような。
とにかく熱い感じになります。
森口博子 「Ubugoe」 作詞:松井五郎 / 作曲:doubleglass / 編曲:冨田恵一
全歌詞がYoutubeで公開されています。
見てみると、「ククルス・ドアンの島」の物語に合う歌詞になっています。
また、森口博子の歌唱力の高さが光ります。
そして個人的に彼女の舌足らずな発音と声が、なんかエッチで好きです(笑)
全体としては大変面白く見ることが出来ました。
細かいところで「ん?」となるところはありましたが、アムロの成長と最終話に連なる伏線というか隠しメッセージというかが実感できたのが良かったと思います。
そして何よりも戦闘シーンです!
昔見た作画のぎこちなさなどが取り払われて、なぜドアンやアムロが強いのかが動きの違いで分かるようなところが「すごい!!」と熱くなりました!
また、モビルスーツの巨大さや兵器としての恐ろしさなどの描かれ方も良かったと思います。
カツ・レツ・キッカの3人が登場したのもうれしかったな~♪
ちなみに全くガンダムが分からないという方がこの作品をいきなり見てもまったく分からんのでしょうな~~。
あとは、この作品はスクリーンで観た方が良い作品ですね~。
スクリーンでリバイバル上映されたりして、タイミング合えば見たいなと思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
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