スペースオペラと言えば、必ず挙げられる作品でE.Eスミス著作のSF小説。
これをアニメ化したのが今回紹介する「SF新世紀レンズマン」です。
1984年公開、広川和之、川尻善明監督作品。
主題歌はTHE ALFEEが担当。
「STAR SHIP ー光を求めてー」
日本でCGを劇場版アニメ「ゴルゴ13」で取り入れて、第2弾となるのが本作。「ゴルゴ13」に比べ、しっかりとCGを意識したシーンづくりをしています。
ただし、今後何十年とCGとアニメーションの相性の悪さは製作スタッフの悩みの種となります。
それぞれが際立ってしまって、うまく融合してひとつの映像にまとめるのが非常に難しい素材です。
平たく言ってしまうと修業して超能力を使えるようになった人々の事。
この世界では銀河パトロールというのがあり、銀河の安全安心を守っています。
その中で厳しい修行の末、与えられるモノがレンズで認識票の役割もあります。
レンズ自体は個々人用にカスタマイズされていて同じものはひとつもないのですが、今作のキムは瀕死のレンズマンを助けようとしている時にレンズを託されます。
これはレンズマンの中でも奇跡に近い現象だったようです。
実はいろいろ細かい設定があったり、アリシア人という上位存在がいたりするのですが、今作ではほとんど描かれずに、主人公キム(キムボール・キニスン)の成長物語として描かれています。
レンズマンには段階が存在して、一番上の階級になると「グレーレンズマン」と呼ばれて、銀河パトロールの誰からも命令を受ける事もなく、さらに銀河パトロールの資金を無制限で使用できる権利が与えられます。
つまり銀河全体のバックアップを受けられるスーパーヒーローになるという事です。
今作は完全独裁制のボスコーンと自由銀河同盟との戦争が舞台となっています。
キムが受け継いだレンズにはボスコーンのDNA情報や戦略情報などが含まれていて、これを同盟に届ければ戦況が一気に覆るというものでした。
「スターウォーズ」でデススターの設計図を同盟軍に届けて破壊するまでの物語とそっくりなのは、言いっこなしで(笑)
そこで謎なのがレンズはひとりひとりに合わせて調整されたものが与えられるので他人のモノを受け取ったり、破壊してしまった場合新たなレンズは手に入れる事が出来ないというのが原作の設定です。
しかも今作のキムはまったくなんの訓練も受けていないただの若者です。多少先輩レンズマンのウォーゼルに教えてもらったところで使いこなせるはずもないのですが・・・。
とまあ、それを言ってしまっては話が進まないのです。宿命的に選ばれて奇跡的に受け継がれた、天才的な才能の持ち主だったと納得しておきましょう。
そして、ボスコーンの首領を倒した後、首領の中身(?)が不気味に鳴動しながら宇宙空間を漂っていきました。これ、恐らく続編を意識していたんでしょうね。
まあ、人間の悪の部分は完全に滅ぼす事は不可能だという隠喩なのでしょう。
今作ではレンズやレンズマンについての詳しい描写やレンズを与えてくれる上位の存在アリシア人は出て来ません。
偶然まったく謎のレンズを受け継いでしまったキムが、仲間やレンズの力を借りつつ大冒険して、恋や成長する物語になってます。
この頃はCGは大変でした。なにせワイヤーフレーム(線画)を作ってから、その上にひとつひとつテクスチャ(色や効果)を載せていって(レンダリング)、1枚の絵を創ったら、同じ要領で少し動いた絵を1から作っていくという気の遠くなる作業を行っていきます。出来上がった絵を1枚ずつ切り替えて映せば映像になります。
ビデオ映像は1秒間30コマなので、1秒間の映像を作るのに30枚の絵を作ります。
ボスコーンの司令戦艦は形状が複雑で(脳みそのようなデザイン)描くのに非常にマシンパワーが必要で、当時のスーパーコンピューターを使って描いたそうです。
それから世界初、手描きのキャラクターとCG画面を合成した映像を作り出したアニメでもあります。
残念ながら、VHS、LD(レーザーディスク)でのソフト化はされたのですが、DVD以降のソフト化はされていません。
版権の問題なのか採算の問題なのか分かりませんが、動画配信もありません。
著作権的にどうなのか、微妙なのですが、今現在Youtubeで本編がご覧いただけます。