こんにちは!電八です。みなさん、映画、観てますか?
伝記映画『Michael/マイケル』の公開などで、世界中で再びマイケル・ジャクソン(MJ)の偉大な足跡にスポットライトが当たっていますよね。ポップの神様として音楽界に数々の伝説を残した彼ですが、実は映画史にもとんでもない「怪物級の作品」を遺しているのをご存知でしょうか?
それが、1988年に公開されたマイケル主演・原案・製作総指揮の映画『ムーンウォーカー』(Moonwalker)です!
初見で観た方は間違いなく「えっ、これ映画…?」「ストーリーどこ行った!?」と頭の中に大量のハテナが浮かぶはず(笑)。ですが、この作品はマイケルが自腹で26億円以上を投じ、自身の夢とエンターテインメントの美学を一切の妥協なく詰め込んだ、まさに「マイケルの頭の中を覗き込むような究極の映像体験」なのです。
今回は、このカルト的名作『ムーンウォーカー』の謎や裏話、衝撃の変身劇、そして映画史に残る数々のエピソードまで、プロの視点で徹底的に解剖・解説していきます!
【3分でわかる!映画『ムーンウォーカー』要約BOX】
- 作品名: 『ムーンウォーカー』(原題:Moonwalker / 1988年日本公開)
- 制作形態: マイケル・ジャクソン主演・原案・製作総指揮。自身のプロダクション(Optimum Productions)を通じ、約2,000万ドル(当時約26億円以上)を全額自腹で出資した完全オリジナル映画。
- 監督: ジェリー・クレイマー(メインパート)、コリン・シルヴァース(「Smooth Criminal」パート)
- 出演: マイケル・ジャクソン、ジョー・ペシ(悪役ミスター・ビッグ)、ショーン・レノン、ブランドン・アダムス ほか
- 作品の特徴: 従来のハリウッド的な「起承転結のあるストーリー映画」ではなく、過去のヒット曲メドレー、最新クレイアニメーション、パパラッチ風刺劇、そして40分に及ぶミュージカルSF特撮アクション「Smooth Criminal」が融合した、他に類を見ない実験的・幻想的エンターテインメント作品。
※この記事は重大なネタバレを含みます。まだ見鑑賞の方はご注意ください。 映画『ムーンウォーカー』は、前作『Thriller』の世界的超絶ヒットを経て、1987年に発表されたモンスターアルバム『BAD』の最高潮の熱量の中で制作されました。
ただの「人気アーティストのアイドル映画」と高くくってはいけません。参加しているスタッフやキャストの陣容が、まさにハリウッドの第一線すぎます。
これだけのメンツを集め、マイケル自身の情熱を具現化しようとしたのですから、つまらない作品になるわけがありませんよね!
ここで映画ファンならずとも気になるのが、「なぜこれほどの世界的ビッグネームの映画が、本国アメリカで劇場公開されなかったのか?」という疑問です。
実は当初、大手映画スタジオでの全米劇場公開が予定されていました。しかし、ハリウッドのスタジオ上層部は、ストーリー性の乏しさやあまりに斬新(悪く言えばカオス)な構造に対し、興行的なリスクを感じて出資や配給に難色を示したのです。
普通ならここで制作が頓挫するか、規模を縮小して妥協するところですが……我らがマイケルは違いました。
「誰も出資してくれないなら、自分で全額出せばいいじゃない!」
なんとマイケルは、自身のプロダクションである「Optimum Productions」を通じて、制作費約2,000万ドル(当時の為替レートで約26億円〜30億円以上)をすべて自腹で投入して映画を完成させてしまったのです!
しかし、配給会社との交渉が長引いた末、アメリカ国内での劇場公開契約は直前でキャンセルに。結果として北米では1989年にダイレクト・トゥ・ビデオ(VHSおよびLDリリース)という形になりました。
ただ、このビデオ販売が歴史的大ブームを巻き起こします。ビルボードのビデオチャートで首位を独走し、第32回グラミー賞の「最長編ミュージック・ビデオ賞」にもノミネートされるなど、記録的な大ヒットとなったのです。
アメリカ国内とは対照的に、日本を含むヨーロッパやアジア、南米では大々的に劇場公開され、驚異的な大ヒットを記録しました!
日本では東宝東和配給により1988年12月に公開。最終的に配給収入4億3000万円を叩き出しました。これは同年に公開された『星の王子 ニューヨークへ行く』や『ニュー・シネマ・パラダイス』などの名作を上回る、1988年の洋画ヒットランキング第16位という見事な数字です。
さらに、当時の日本国内における映像ソフト(VHS)の売り上げも伝説的でした。当時、ビデオテープ1本の価格は約1万円(9,800円前後)という高価格帯だったにもかかわらず、予約だけで30万本を突破! お茶の間のビデオデッキに『ムーンウォーカー』のテープが吸い込まれていった時代だったのです。
『ムーンウォーカー』を初めて観た人が必ず口にするのが、「これって結局、どういう話なの?」という感想です。
ハリウッド映画の標準的なテンプレート(三幕構成、明確な起承転結、伏線回収)を期待して観ると、完全に置いていかれます。なぜなら、この映画は1本の連続したドラマではなく、大きく分けると「4つの章・3つのパート」で組み立てられた、オムニバス形式の映像芸術だからです。
映画批評の観点から言えば、本作はイタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニの名作『8 1/2(ハーフ)』や、前衛的な「意識の流れ」を描く芸術映画に近いアプローチで作られています。
マイケル・ジャクソンという天才が、頭の中で普段見ている「夢」「憧れ」「メディアへの怒り」「子供たちへの愛情」「SFファンタジー」を、映画という無制限のキャンバスにそのまま映し出した思考のテーマパーク。そう捉えると、このカオスな構成が途端に愛おしく、深い意味を持って迫ってきます。
映画の冒頭(第1章)は、1987年のブレイブス・スタジアムでのライヴ版「Man In The Mirror」からドラマチックに幕を開けます。世界中の観客が熱狂し、涙を流す圧巻のパフォーマンス。ここから一気にマイケルのヒストリーへと引き込まれます。
続く回想セクションでは、Jackson 5時代の「ABC」「I Want You Back」から、ソロとしての金字塔「Rock With You」「Billie Jean」「Beat It」「Thriller」まで、数々の名曲とミュージックビデオの断片が疾走感あふれるコラージュで紡がれていきます。
ファンにとっては「マイケル・ジャクソンの歩んできた奇跡の軌跡」を体感する最高の導入部であり、彼がどれほど圧倒的な存在であるかを改めて思い知らせるセクションです。
ヒストリーに続いて始まるパート2(第2章)からは、一転してポップでシュールなファンタジー世界へと突入します!
まず登場するのが、名曲「Bad」のPVをキャスト全員「子供」に置き換えてパロディ&リメイクした『BADDER(バッドの子供版)』。ミニサイズのマイケル(演:ブランドン・アダムス)が、革ジャンを着てクールに踊り狂う姿はあまりにもキュート! マイケルの無邪気な子供心と、次世代の才能に対する温かいまなざしが詰まった名シーンです。
続いて、撮影所から出たマイケルが、狂信的なファンや過激なパパラッチの大群に追い回される「Speed Demon」へと展開します。
ここでは粘土人形を1コマずつ動かして撮影する「クレイアニメ(コマ撮りアニメーション)」技術が惜しみなく使われています。マイケルはパパラッチの目を盗むため、粘土細工の巨大なウサギ「スパイク」に変装してバイクで爆走!
逃げ延びた先でウサギの着ぐるみを脱ぎ捨て、粘土のウサギとマイケル本人がキレッキレのタップダンス・バトルを繰り広げるシーンは必見です。メディアの狂騒から逃れたいという切実な願いを、ダークにならずユーモアと特撮技術で笑いに変えるマイケルのセルフプロデュース力には脱帽させられますね。
そしてそのまま、過激なゴシップ報道やイエロー・ジャーナリズムを痛烈に批判した楽曲「Leave Me Alone」のミュージックビデオへと流れていきます。巨大なマイケルが遊園地のアトラクションに縛り付けられている映像は、世界中のメディアに私生活を暴かれ、見世物にされていた彼の苦悩が象徴的に描かれています。
映画『ムーンウォーカー』で採用されている楽曲のラインナップは、公式の上映・作品資料や映画解説資料によると以下の通り構成されています。
アルバム『BAD』の収録楽曲を軸にしつつ、マイケルの歴史的ヒット曲やカヴァー、エンドロール曲まで幅広く網羅された豪華なラインナップとなっています。
そして映画の後半、上映時間の約半分にあたる約40分間を費やして描かれるのが、本作の最大のクライマックスである「Smooth Criminal(スムーズ・クリミナル)」パートです!
舞台は1930年代のアメリカ。暗黒街の雰囲気が漂う巨大なセット「Club 30’s」に、白いスーツとソフト帽(フェドーラ帽)に身を包んだマイケルが颯爽と姿を現します。
コインを背後へ弾き飛ばしてジュークボックスへ一発で叩き込むオープニングから、店内を埋め尽くす数十名のダンサーたちとの完璧に揃った群舞まで、一秒たりとも目が離せません。
そして、世界中のエンターテインメント界を激震させたのが、前傾姿勢傾斜パフォーマンス「ゼロ・グラビティ(Lean)」の初披露です!
身体を一直線に伸ばしたまま、足首だけを軸にして前方に45度以上傾くこの技。CG技術が発達していなかった当時、「どうやって撮影しているんだ!?」「マイケルは重力を克服したのか!?」と全世界が騒然となりました。
※なお、後にマイケルはこの「靴底のV字型の溝と床から飛び出すピンを噛み合わせる仕掛け」で米国特許(特許番号:US5255452A)を取得しています。発想力もさることながら、あれだけの角度に耐える足首と体幹の筋力を保持していたマイケルの身体能力こそが、最大の「特許」と言えるでしょう。
この「Smooth Criminal」のシーンには、映画ファンやダンスファンの胸を熱くさせる、非常に感動的な裏話が存在します。
マイケルが劇中で着用している白いスーツと青いシャツ、そしてフェドーラ帽スタイルは、彼が「生涯の師・神様」と仰ぎ、敬愛してやまなかった伝説のミュージカルスター、フレッド・アステアが映画『バンド・ワゴン』(1953年)の「Girl Hunt Ballet」シークエンスで着ていた衣装への完全なオマージュです。
実は『ムーンウォーカー』の撮影が進行していた1987年6月22日、フレッド・アステアが88歳でこの世を去るという悲報が届きます。
大きなショックを受けたマイケルは、急遽アステアへの深い哀悼と敬意を表するため、衣装の右腕に自らの手で「青いリボン」を巻き付けました。
そう、あの右腕の青いアームバンドは単なるファッションデザインではなく、「永遠の師フレッド・アステアへ捧げた喪章(腕章)」だったのです!
撮影現場には、アステアの長年の振り付けパートナーであり親友でもあったハーミーズ・パンも招かれていました。マイケルの完璧なダンスステップとアステアへの深い愛を目撃したハーミーズ・パンは、感涙したと伝えられています。ダンスの歴史と魂が、世代を超えてしっかりと継承された瞬間でした。ここ、テストに出ますよ!
「Smooth Criminal」は単なるダンスシーンでは終わりません。後半、物語は子供たちを麻薬漬けにして世界を支配しようと企む悪党ミスター・ビッグ(ジョー・ペシ)率いる武装軍団との死闘へと発展します。
追い詰められた子供たち、そして大量の銃器で包囲されたマイケル。絶体絶命のピンチを迎えたその時、空からひと筋の「流れ星」が舞い降ります。
願いを込めたマイケルは……なんと伝説の名車(コンセプトカー)へ変身!
激しいカーチェイスの末、敵のアジトに乗り込んだマイケルは、さらに全長数十メートルに及ぶ超巨大なハイテク・ロボット(ガンメタル色の鋼鉄の巨人)へとトランスフォームを遂げます!
胸部から巨大なガトリング砲やレーザー兵器を展開し、ミスター・ビッグの部隊や巨大な砲台を一瞬で粉砕。最後は黄金に輝く超高速宇宙空母(スターシップ)へと姿を変え、高音の叫び声を轟かせながら夜空の彼方へと飛び去っていくのです……。
「いや〜、マイコー凄すぎますね(笑)!」
ダンス映画を観ていたはずが、気づけば東映特撮やロボットアニメも真っ青のメガ盛りSF超大作になっている。この怒涛の急展開と突き抜けたスケール感こそが、『ムーンウォーカー』がカルト的人気を誇る最大の理由なのです。
前述の通り、マイケルがロボットや宇宙船に変身する怒涛の特撮シーンを手掛けたのは、特殊メイク界の生きる伝説リック・ベイカーです。
さらに、当時のハリウッドで最高峰とされた3大SFX工房――ボリス(Will Vinton Studios等のクレイアニメ陣営)、ドリームクエスト・イメージズ(Dream Quest Images)、オール・エフェクツ(All-Effects)が総結集しました。
CG(コンピュータ・グラフィックス)技術がまだ黎明期だった1980年代後半において、本作で見られる「実写人間と粘土アニメの完璧な影や反射の合成」や「ミニチュア模型とマットペイントを駆使したロボット変身シークエンス」は、当時の映像技術の極致と言えます。
マイケルがロボットに変身する際、皮膚が金属に変化し、パーツが複雑に組み上がっていくストップモーションと光学合成の融合は、現在観てもまったく色褪せない手作りの温かみと圧倒的な迫力に満ちています。
クルマファン・映画ファンなら絶対に見逃せないのが、劇中でマイケルが変身した「あの未来的な車」の正体です。
地ばいを這うような超低重心と、まるで宇宙船のようなウェッジシェイプ(くさび型)デザインが印象的なあの車。ベースとなったのは、イタリアの名門デザインハウス「ベルトーネ」が1970年のトリノ・モーターショーで発表した伝説のコンセプトカー「ランチア・ストラトスHFゼロ(Lancia Stratos 0)」です!
あまりにも先進的なデザインだったため、映画の撮影にあたってはレプリカ車両が特別に制作されました。
そして、この映画撮影に使用された劇中車(実走可能なプロップ車両)に関して、近年驚きのニュースが舞い込みました。アメリカの有名自動車オークションサイト「Bring a Trailer」にて、映画『ムーンウォーカー』の撮影で実際に使われたレプリカ車両が出品され、なんと8万2,000ドル(当時の為替レートで約1,296万円以上)という高値で落札されたのです!
マイケルが劇中で自ら変身し、夜の街を疾走した伝説の車。その歴史的価値は、自動車コレクターやマイケルファンの間でも今なお超高値で評価されているのですね。
映画『ムーンウォーカー』を語る上で絶対に外せないのが、映画をベースにして制作されたSEGA(セガ)の伝説的ビデオゲーム『マイケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカー』の存在です!
1990年にアーケード(業務用)およびメガドライブ(家庭用)で発売されたこのアクションゲーム。マイケル本人が開発に深く関与しており、BGMには「Smooth Criminal」「Beat It」「Billie Jean」「Bad」などの名曲がFM音源で忠実に再現されています。
ゲームの目的は、敵の目を盗んで扉や車の中に隠されている子供たち(少女ケイティ)を救出すること。
しかし、このゲームの何がすごい(そして面白い)かと言えば、マイケルの攻撃方法と必殺技です。
「腹を抱えて大笑いしてしまうツッコミどころの多さ」と「ゲームとしての圧倒的な爽快感・完成度の高さ」が見事に同居しており、今なおレトロゲームファンやマイケルファンの間で神ゲー・名作として愛され続けています。
公開から35年以上が経過した現在、海外の映画コミュニティ(RedditやLetterboxd、IMDbなど)において、映画『ムーンウォーカー』はどのように評価されているのでしょうか?
映画批評家や一般の映画レビューを見ると、評価ははっきりと2つに分かれています。
そう、誰もが「伝統的な映画としての完成度」を求めて観ているわけではないのです。マイケル・ジャクソンという不世出の天才が残した熱量、映像美、そしてエンターテインメントへの純粋な無邪気さを全身で浴びる作品――それこそが『ムーンウォーカー』の現在地であり、永遠のカルト人気を支える理由なのです。
今回は、1988年公開の伝説的映画『ムーンウォーカー』を徹底解説してきました。
ハリウッドの枠組みに囚われず、自腹26億円を投じてまで自分の見たい世界・見せたい夢を形にしたマイケル・ジャクソン。
物語の辻褄や整合性といったちっぽけなルールを超えて、「映画という魔法を使って、世界中のファンを楽しませたい」というマイケルの純粋すぎる情熱(パッション)が、80年代最高峰のVFXとダンスパフォーマンスによって結晶化した作品。それが『ムーンウォーカー』なのです。
まだ観たことがない方も、昔観て「なんじゃこれ!?」と困惑した方も、ぜひこの裏話や背景を知った上で、もう一度鑑賞してみてください。きっと初回とはまったく違う、マイケルの深い愛と情熱に胸が熱くなるはずですよ!
A1: マイケル・ジャクソンの過去のヒット曲を振り返るヒストリーパート、ファンやパパラッチとの逃走を描いたクレイアニメパート、そして子供たちを麻薬漬けにしようとする悪の組織(ミスター・ビッグ)から子供たちを救うため、マイケルがロボットや宇宙船に変身して戦う「Smooth Criminal」を中心とした、ミュージカルSFアクションファンタジー作品です。
A2: 従来の映画のような「明確なストーリーや起承転結」が存在せず、ミュージックビデオや特撮、アニメーションが融合したオムニバス形式をとっているためです。映画批評家からは「脈絡がない」と評されることもありますが、リック・ベイカーらによる当時の最高峰VFXや伝説のダンスシーン「ゼロ・グラビティ」など、マイケルの圧倒的なパフォーマンスが凝縮されているため、世界中のファンからカルト的な熱狂をもって愛されています。
A3: Blu-ray(ブルーレイ)版は現代のテレビモニター(16:9)に合わせて画面の上下がカット(トリミング)されたワイド画面仕様になっています。公開当時のオリジナル画角であるスタンダードサイズ(4:3)で鑑賞したいコレクターやファンの間では、あえてDVD版を選択して鑑賞するケースも多く見られます。
それでは、みなさんも良い映画ライフを!電八でした!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回の記事は以上となります。
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