「インド映画って、ミュージカルっぽい歌やダンスがいきなり入ってくるヤツでしょ?苦手なんだよねー」
なんて方、いらっしゃるとい思います。
そんな方にこそ「RRR」はお勧めできる作品だと思います。
この作品は3時間という長尺にもかかわらず飽きさせず、ダンスや歌も量的に控えられている上にちゃんと必然がある演出となっています。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
2023年公開のS・S・ラージャマウリ監督の大河アクション作品。
コドゥリ・スリサイラ・スリ・ラージャマウリ(Koduri Srisaila Sri Rajamouli)
「バーフバリ」などで知られる監督の最新作。
インド神話にちなんだキャラクターのインド文化・掟・友情・愛情・家族愛・使命などをド派手なアクションを交えて描いた作品。
舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム。大義のため英国政府の警察となるラーマ。熱い思いを胸に秘めた男たちが運命に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに究極の選択を迫られることに。彼らが選ぶのは、友情か?使命か?
Filmarksより引用
マハーバーラタは古代インドの叙事詩で、パーンダヴァ王子とカウラヴァ王子の兄弟の闘いを描いています。王位を巡る争いや陰謀、神々や英雄たちの介入が交錯し、壮大な戦争が展開されます。主人公のアルジュナは神クリシュナの助言を受けながら、自らの義務と道徳を追求し、兄弟たちとの激しい戦いに臨みます。物語は勇気や忍耐、愛や裏切り、宿命や倫理の問いに深く触れ、人間の善悪や存在の意味を問いかけます。マハーバーラタは古代インドの文化と宗教の基礎を築き、普遍的な価値観として尊重され続けています。
ラーマーヤナは古代インドの叙事詩で、ラーマ王子の冒険を描いています。彼は妻シーターとともに亡父の遺産を取り戻すために旅に出ますが、シーターが邪悪なラーヴァナによって誘拐されます。ラーマは忠実な盟友のヴァーナラと協力して、シーターを救うために困難な試練に立ち向かいます。彼らの冒険と戦いの中で、神々や神秘的な存在が登場し、愛と忠誠、勇気と正義の力が試されます。最終的に、ラーマはシーターを救出し、邪悪なラーヴァナを打ち倒し、善と正義を回復します。ラーマーヤナは道徳的な教訓として広く読まれ、インド文化の重要な要素となっています。
それぞれ別々の神話のキャラクターがこの映画で強力なタッグを組んでいるわけです。
言ってみたら「アベンジャーズ」みたいなものですかね。
しかも、各シーンのいろんなところにインド神話にちなんだものがちりばめられています。
インド文化や神話に明るい人は何を見ても「おお!」と思えるようです。
火の神。ラーマーヤナのラーマ王子がモチーフ。神話と同じでラーマの許嫁としてシータも登場します。
ラーマ王子はインド神話の英雄であり、ラーマーヤナの主人公です。彼はヴィシュヌ神の人間の姿として知られており、完璧な王子として描かれています。ラーマは美しい容姿と高潔な性格を持ち、忠誠心と道徳的な価値観に満ちています。彼は真実と正義を重んじ、義務を果たすことに情熱を注ぎます。ラーマは優れた弓の使い手であり、勇敢さと冷静さを兼ね備えています。彼は愛する妻シーターを守るために困難な試練に立ち向かい、悪と戦います。ラーマは善と正義の象徴とされ、多くの人々から尊敬されています。
水の神。マハーバーラタのパーンダヴァの5王子のひとり。彼は「西遊記」の孫悟空のモデル・猿神ハヌマーンと出会っています。
ビーマは古代インドの叙事詩マハーバーラタに登場する英雄的なキャラクターです。彼は強靭な体力と勇敢さを持ち、無敵の戦士として知られています。ビーマは力強くて豪快な性格であり、誠実さと忠誠心に溢れています。彼は兄弟たちや正義を守るために戦い、勇気と覚悟を示します。一方で、ビーマは非常に情に厚く、家族や友人に対する愛情深さが特徴です。彼は戦場での剛勇さと智謀を兼ね備え、彼の存在は仲間たちに勇気を与えます。ビーマはマハーバーラタの物語において重要な役割を果たし、その人間的な魅力と戦士の姿勢によって多くの人々の尊敬を集めています。
橋で子供を救うシーンで旗を濡らして身体に巻き付け、炎の中から飛び出してきます。これはハヌマーンが魔王との戦いの際に炎の中から飛び出してくる有名なシーンから引用されています。
「バーフバリ」などでも評価が高いのがラージャマウリ監督の演出です。
ざっくりこの2点が評価を上げている原因だと思います。
例えば、アクションシーンなんかは一瞬スローモーションで何をしようとしているのかをグッと見せた後にスピードを上げてキレの良さを見せます。
この手法のおかげで素早いアクションも目がグルグルすることがないので非常に見やすくなります。
昔からのインド映画やドラマの映像演出をなぞりながら、うまく見せる映像にしているので、インド国内の老若男女問わずに楽しめる作りになっています。
ダンスの時のキャラクターの見栄の切り方や、アクションシーンのカット割り、ダンスの見せ方や歌の入るタイミングなど、細かい部分にも気を使って演出されています。
この映画はまず、オープニングがやばいです!
ラーマとビーマのふたりのそれぞれの事情が語られます。
ラーマはインドを支配するイギリス人たちの警官としての職務と何かのため、ビーマはイギリス人にさらわれた妹を救出するため、それぞれ首都に出てきます。
そして橋で鉄道が爆発炎上し、その下の川で命の危険にさらされている子供を助けるためにふたりは協力します。
まるで何も言わなくてもお互いの考えていることが理解でき、無事に子供を救出します。
そのことがきっかけでふたりは兄弟分として大親友になります。
ここまでが物語冒頭となるのですが、すごいのがほとんどセリフなしでここまでのそれぞれの事情や立場なんかをほぼ映像だけで理解できるところです。
しかも、ここまでで十分に面白く、もう少しだけ時間長くすれば1本の映画になってしまうくらいです。
インド神話などでは、大地女神が基本となる物語が多く、女神や母神など女性がかなり活躍します。
つまり文化の中心にまず女性ありきなのがインドの考え方の基本なんですね。
描かれる女神像や女性像も「強き女性」が描かれることが多いです。
ナートゥダンスも歌詞を見ると大地母神に捧げるためのダンスだという事になっています。
しかし本編では女性はあまり出番がないです。
まあ、ストーリーやアクション、描く時代設定などを考えるとどうしてもそうなってしまうのかもしれません。
特に今回シーター役のアーリヤー・バットは他の映画やドラマなどでは現代的で芯の強い女性を演じることが多くて、インド国内では日本における米倉涼子みたいな位置づけの女優です。
敢えて彼女を起用することで、現代的な強さをもった女性が今作にも出演しているということで具体的な強さは描けなかったが、意味合いとして女性へのリスペクトを込めているみたいです。
だからエンディングでのダンスでもシーターがラーマとビーマと一緒に踊っています。
主人公の2人、ラーマとビーマともに、ダンスやアクションの際に非常にかっこいい「見得を切り」ます。
これこそアジア圏の文化のひとつだと思います。
セリフや歌詞の言い回しに節をつけて、節に合わせて視線やポーズを極める、「ビシッと決まる」瞬間ってやつです。
これ、中国や日本の伝統芸能などでもよく見られます。
アジア圏の文化のひとつとして、視線や手の位置、姿勢や足の組み方などに意味をつけて、動きの節々でポーズを極めます。
しかも、彼らのキレッキレのダンスやアクションの一節、一節に見得を切る仕草があって、決まり過ぎてシビれます!
眉間から何かビームのようなものが迸り出てるように感じます。
素晴らしいですよね!
この映画のエンディングは画期的だと思います。
インドの映画では珍しく、本編での歌やダンスがほとんどない作品でした。
その分、エンディングでがっつりダンスしてます。
メインキャストのふたり、シーター、他キャラクター、ダンスチームがキレのいいインドダンスをたっぷり披露しています。
そして最後、本編には一切出てこなかった人物が出てきて一緒に踊っています。
実はこの人はラージャマウリ監督です。
ダンスの合間合間に、巨大な人物イラストがバックに掲げられます。
これらはインドの英雄たちの画です。ダンスしながら彼らのことを歌いあげインドの歴史を少し紹介しています。
そして何よりも画期的なのが、スタッフロールです。
読ませる気が全くない、そんでもないスピードで流れていきます。
まあ、今や配信の時代で大して待たずに再度見る機会もあります。情報自体はホームページなどに記載があります。
スタッフロールがメインではないという画期的で視聴者に優しいエンディングです。
冒頭がほぼセリフなしでも各キャラクターの立場や背景、ストーリーが理解できるってのが本当にすごいです。
また、散りばめられた伏線がすべて気持ちよく回収されていきます。
その上で、ド派手なアクション。
最近多いのがやたらとスピードが速くて何をやってるのか一度見ただけじゃイマイチ分からない作品が多いです。目まぐるし過ぎて「アクション酔い」しちゃうものもあります。
しかし今作は、緩急の付け方が非常に美味くて気持ちよくアクションを見られます。
そして王道のストーリーを盛り上げる王道の演出!!
燃えますわ!!!
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
この記事を気に入って頂けましたら幸いです。
また是非、SNSなどでシェアしていただければと思います。