80年代SFホラーを語るならこの作品も欠かせません。
デビッド・クローネンバーグ監督の出世作にして、もっとも大ヒットした作品。
という訳で、「ザ・フライ」「ザ・フライ2二世誕生」のシリーズを紹介します。
※注意:この記事には気分を害する恐れのある画像や映像が含まれます。ご注意ください。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
『ザ・フライ』(The Fly)は、1986年のアメリカ映画。1958年に公開されたホラー映画『ハエ男の恐怖』のリメイク作品。
監督はデビッド・クローネンバーグ。
出演はジェフ・ゴールドブラム、ジーナ・デイビス。
公開時のコピーは「Be afraid. Be very afraid.(怖がってください・・・とても、とても怖がってください・・・)」
『ザ・フライ2 二世誕生』(ザ・フライ2 にせいたんじょう、The Fly II)は、1989年のアメリカ映画。1986年公開の映画『ザ・フライ』の続編。前作でハエと融合してしまった男の遺児が、父親と同じ運命に翻弄される姿を描いている。
キャッチコピーは「Like father. Like son.(あの父にしてこの子あり)」。
監督は1作目で特殊効果を担当したクリス・ウェイラス。出演はエリック・ストルツ、ダフネ・ズニーガなど。
天才科学者セスは、物質転送機「テレポッド」を開発するが、自らの実験でハエと遺伝子が融合してしまう。彼は次第に人間ではなくなり、恋人ヴェロニカや元恋人ステイシスとの関係も破綻する。セスはヴェロニカと胎児との融合を試みるが、ステイシスに阻止される。最後には、ポッドの部品とも融合したブランドルフライとなり、ヴェロニカに自らの死を願う。ヴェロニカは涙ながらに彼を撃ち殺す。
ハエ男セスの息子マーティンは、巨大な卵から生まれた後、研究所で成長する。彼は父親の物質転送機の研究を継承し、恋人ベスと幸せな日々を過ごすが、ハエの遺伝子が発現し始める。研究所長バートックは、マーティンを利用して物質転送機の完成を目論むが、マーティンはバートックの裏切りに気づく。マーティンはハエ人間と化し、研究所の人々を襲う。最後には、バートックと対決し、彼を物質転送機に押し込んで
さて、天才博士のセスがテレポッドで合成されてしまったのは、1匹のハエ。
みなさんの普段の生活で見かけることもある、世界的にもっとも有名な昆虫の1種です。
そして、その大きさがたったの数mmほど。
だからこそ、恐怖の対象にはなりえません。しかし、それが人間と同等の大きさになった時、その驚異的な能力に恐怖を感じずにはいられません。
ハエ以外の昆虫ももちろん似たような事が言えるはずです。
彼らは、自在に飛び、強靭な外皮に、シンプルで高機能な身体の機構を有しています。さらに触覚を使いニオイで仲間とコミュニケーションし、複眼による異常に広い視界を持っています。
そして、その筋力は自重の何倍もの重さのものを軽々と持ち上げることが出来ます。だからこそ、垂直の壁や天井で逆さまになっても敏捷に行動することが可能です。
セスは合成直後、全身にパワーがみなぎり、今までにない程に爽快な気分だと言っています。人間としては感じたことのない筋力やエネルギーの代謝を「パワーのみなぎり」として感じていたのでしょう。
「今なら何でもできそうだ」とも感じていたでしょう。
さらに人間としての悩みが薄くなります。これは昆虫が「生存することと子孫を残す事」のみを目的に生きているので、その他の事については必要ないと感じるからでしょう。
つまり悩みがなくなり、気分が爽快になるわけです。
「2」の冒頭は1作目の続きです。
セスの「死なせてほしい」という無言の願いを聞き届けた後、衝撃的な事実が発覚します。
セスの恋人であったヴェロニカは彼の子供を身ごもっていることを知ります。
そう、あのハエの遺伝子が合成されたセスとの子供です。
急速な成長をとげていて、気が付いた時には中絶が出来ないとこまできていました。
出産をするしかない状況で、いざ出産!ところが取り上げられたのは巨大な昆虫のサナギのような物体。
あまりのショックにヴェロニカは命を落としてしまいます。
その後医師がサナギのようなものを切り開くと中から人間の赤子がでてきました。
「2」でのSF的な興味の対象としてハエ遺伝子を受け継いだ子供が、どういった生物学的な特徴を持つかという事にフォーカスされていきます。
成長速度が常人よりもはるかに速く、素養として頭も非常に良い。
研究所長バートックは彼をマーティンと名付け研究所から外に出さずに厳戒態勢下で最高機密として英才教育を施しながら、自分を父親と思わせるように育てます。
たった、5年でマーティンは成人へと成長します。頭脳としても天才的な才能を発揮します。
父親セスと同じく天才的な頭脳により「テレポッド」を実用段階にまで復旧させてしまいます。
同時にマーティンの身体はセスと同様の変貌を遂げていきます。セスよりも遺伝子が安定していてあらかじめ変貌することがプログラムされているような感じです。
(この辺が、クローネンバーグ監督じゃないところが顕著に出ているところですね~。肉々しいぐちょぐちょの表現が大好きなクローネンバーグが、マーティンの変貌後の姿をこんな完成度の高い姿にはしなかったでしょうね~)
そして最終的にマーティンは人間になるために、人間ひとりを自分と一緒にテレポッドに入れて、人間として自分を再構成するためと、復讐としてバートックをテレポッドに引きずり込む。
そしてバートックは不完全な人間の出来損ないのような姿に変貌してしまう。
この物語のキーとなる技術が「テレポッド」です。「テレポート・ポッド」の略です。
「ポッド」は「豆」や「繭」とか「丸みを帯びた容器」を意味します。
「テレポッド」はAポッドとBポッドの二つがあって、ふたつで一組で扱います。
簡単にいうとAポッドに入れた物体を、Bポッドに「転送」する装置です。
モノを目的地に一瞬で送り届ける事ができる夢の技術です。
応用すれば交通、物流・輸送などで時間と労力を大幅に削減できるようになります。
直接職場に行けちゃうので、通勤時に満員電車に揺られる憂鬱な時間は無くなるわけです。
さらに、医療において手術で切ることなく、悪い部分だけを取り除くことができたりと、応用出来る範囲が非常に広い素晴らしい技術です。
劇中では触れられていないが、転送後の本人はただのコピーではないか?転送時にオリジナルは死んでいるのではないか?という問題があります。
これは仕組みを見てみると、当然の不安と言えるでしょう。
Aポッドに入れられた物体Xを原子レベルで解析して分解します。そしてその情報を元にBポッドで原子から再構成します。
Bポッドで出来上がった物体Yは物体Xとまったく同じ姿かたちをしています。
ただしこれを生命あるもので行った時に、物体Xは転送時に原子のレベルで分解されてしまいます。これは死んでしまっているのではないかという疑問が生まれます。
そしてBポッドに出来上がった物体Xそっくりの物体Yはあくまで再構成されたコピーであって、物体Xオリジナルとは違うものじゃないかという疑問です。
この問題については「スタートレック」シリーズでSF的にひとつの答えにたどり着いています。
生命における「量子的連続性」を応用した性質を転送先の物体に持たせることで、記憶も経験も引き継ぐ事が出来るのでオリジナルのまま再構成されるという事になっています。
量子テレポーテーションという技術になってくるようです。
現在、実際に研究を行っている科学者が存在し、関連する論文なども発表されてきています。
早く実用化されるといいなぁ~っと心待ちにしています。
「ドラえもん」の秘密道具のひとつ「どこでもドア」が似たようなものだと思います。
しかし、本作のテレポッドとは仕組みに大きな違いがあります。
「どこでもドア」は空間を歪める装置です。
簡単に言うとA地点とB地点が仮に2万㎞離れていたとしてます。A地点を入り口とします。
「どこでもドア」はA地点とB地点の間の空間を折り畳み、2万㎞の距離を0にしてしまいます。
入り口に出口がくっついちゃう訳です。だから自分の生きたいところにドアを開けた向こう側が繋がっているわけです。
どちらかと言えば「ワープ」に近い概念を扱った道具です。
2023年11月現在、見放題配信はなく、Amazonプライムビデオでのレンタル配信のみです。
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