この度、2022年あの大ヒット作にして高橋留美子のデビュー作「うる星やつら」のTVアニメが放送決定との事。
◆TVアニメ「うる星やつら」
めでたや~っという事で、「うる星やつら」劇場版アニメでもっとも人気の高い作品であろう、「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」を紹介しつつ、「うる星やつら」を復習してみよう!!
1984年公開の押井守監督作品。「うる星やつら」の劇場版アニメ第2作目で押井守の出世作として知られる。
原作は「犬夜叉」や「境界のRINNE」などでお馴染みの高橋留美子。彼女の作品はほぼアニメ化されていてそのほとんどがヒット作になっています。
高橋留美子作品の特徴の一つとして、たくさんのキャラクターがレギュラーメンバーとして登場する日常的なドタバタを描くモノが多いです。
もちろんTVシリーズのキャストがそのまま起用されています。
主人公・諸星あたるは地球に襲来した宇宙人鬼族と人類を代表して戦う事になる。方法は鬼族の代表ラムと鬼ごっこをして、ラムの角をつかむことが出来たら地球人類の勝ち。勝てば地球は侵略されずに済むというもの。
しのぶの色仕掛け(勝ったら結婚してあげる)でやる気を出したあたるは奇策を用いて何とか勝利。だが、角をつかむ際に「これで(しのぶと)結婚だ~!」と叫んだ結果、勘違いしたラムと結婚する事に!!
ラムはあたるの実家に押しかけ、居着いてしまう!
多種な宇宙人たちと、あたるとラム、その仲間たちとのドタバタな日常が始まる事になった!!
という、SFラブコメディ作品です。
学園祭の前日、友引高校の全校生徒たちは準備で大忙し。泊まり込みで準備作業をする毎日を送っていた。あたるたちの担任教師の♨マークがボロボロの様相で現れ、ストレスと過労で倒れる。
保険医にして術師さくらは休養させるために♨マークを帰宅させる。しかし睡眠薬代わりに渡したのがトランキライザー(動物用麻酔薬)ではなく、全く関係ない強力な下剤を渡してしまった。しまったとばかりに♨マークのアパートに行くと部屋の中はカビとキノコが異常増殖してその中に♨マークが埋もれているという異常事態だった!
♨マークが言うには「今日が何月何日なのか」、いつから「学園祭の準備」を行っているのか、全く思い出せないという。
さくらはストレスから来る妄想だと説得するが、♨マークは何かがおかしいと言い張る。
そして聞いているさくらも違和感を感じるようになり、♨マークと一緒に夜、先生、生徒をすべて帰宅させる。
するとメガネたち4人組、面倒終太郎、しのぶ、さくら、は友引町から出ることが出来ずに友引高校に戻ってきてしまう。
唯一、あたるとラムは自宅に帰宅できていたので、さくらたちは皆あたる宅に世話になる事に。しかも♨マークが行方不明になっていた。
夜が明け、みな学校に明日の学園祭の準備に向かうために登校する。
これはいよいよおかしい、しかも友引高校がその中心になっている。という事で夜中に校舎の中を詳しく調べてみようという事に。さくらは校舎外で監視、ラム、あたる、面倒、メガネたち4人組で校舎内を調査すると、校舎の中がおかしなことに。外観では3階建てのはずの校舎が4階建てになっていたり、内部では重力を無視した構造になっていたり、無限回廊が存在したりと怪奇現象のオンパレードだった。
全員、身の危険を感じてその場を逃げ出した。
翌日、街からは人の気配が全くなくなり、ラム、あたる、面倒、しのぶ、メガネたち4人組、さくら、あたるの両親、竜之介とその父、以外の人々は消え去ってしまった。
一体、友引町には何が起きているのか?
この作品は「学園祭の前日」をリピートする夢の中で記憶をリセットされながら暮らすうちに、違和感を覚え・・・。
という話なんですが、現実と見分けがつかないほどリアリティ溢れる夢の場合、自分にとって現実と変わらないという話なんですね。しかもおかしな事があっても受け入れてしまう。
例えば、設定上、友引高校の校舎は実は2階建てなんですが、本作では、一同で校舎を調査するために夜中に乗り込むシーンでは「3階建てが4階建てに」というさくらのセリフがあります。
夢の中のおかしなところは夢ゆえに受け入れてしまっていて、少しもおかしいと気付きさえしないという描写です。
いわゆる「胡蝶の夢」をモチーフにした話になっています。
実は原作者:高橋留美子からはこの作品はあまりいい印象を持たれていないそうです。
確かに、原作を模した完全な別作品になっています。
高橋留美子がインタビューで「これは押井さんの『うる星やつら』です。」と答えていると記録になります。
自分の作品ではないという事を言っています。また「1作目は好きだけど2は大嫌い」と答えた記録もあるそう。
その大きな原因になったのがラストシーンのセリフで、
「おい、またやってるぜ、あのふたり。」
「まったく、あいつらには進歩とか成長とかいうもんが、からっきしないからなぁ。一生やっとれ。」
と、監督らしき人物が言っています。
これ、「1話完結ものの作品って嘘っぱちで、進歩も成長もしない。そんなもの相手にしてられないから、勝手に一生やってろよ」って意味にとれます。
さらに原作もその他の「うる星やつら」シリーズでもあたるはラムの事を好きだという事は絶対にありません。しかしこの作品ではラム以外であれば躊躇せずに言ってしまうのです。
「うる星やつら」の世界観を完全に破壊してしまっています。
これで高橋留美子が激怒したと言われています。
今作後、高橋留美子作品を押井守が手掛ける事がない(できない)のはそのせいなのかもしれません。
つまり、押井守のやりたい放題の結果だったのだという見方が大方の様です。
しかし、世の中的には作画のクオリティやオタク好みの描写の数々、大人でも楽しめる映画的で先鋭的な脚本・演出でその他の「うる星やつら」劇場版よりも人気が高く、その後のクリエイターにも多大な影響を与えた作品でもあります。
なので、細かく見てニヤッと笑えるところや、「おお!」と驚かせる演出などはかなり多いです。
例えば、冒頭の学園祭準備の大騒ぎのシーンなんかは、着ぐるみでウル〇〇マンやバル〇〇星人、ゴ〇ラシリーズのX〇人や、海底〇艦、などなどたくさんのキャラクターが描かれています。
また、ミリタリー好きにはたまらない戦車レオパルトや、立ち食いそば屋マッハ軒から垂直離陸で飛び立つ戦闘機ハリヤーなどもあり、幅広くオタク心をくすぐる描写があります。
夢の中にいるキャラクターたち、キャラクターたちの現実、キャラクターたちを見ている製作者たち、それを作品として観ている観客という構造になっています。
マネキンや人形が出てくるシーンは偽物であるという事を表すメタファーで、夢の中、つまり虚構を意味します。
そして「胡蝶の夢」をモチーフにしているので蝶が現れるシーンも虚構を表すという意味です。
最後に夢邪鬼があたるを夢から逃がすまいとしていくつかの夢を急ごしらえで作り出します。
夢は虚構なので夢邪鬼が大工道具(主にハンマー)を使って創り出しています。なので、いわゆる美術セットになっています。(だから夢邪鬼はニッカポッカに足袋なんですよね。)
しかし、そこで感じた感情は紛れもなく本物です。
ラムが死んでしまった夢を見させられたあたるはさすがにこたえたようです。
最後、白い服の少女はラムだったと判明した時にラムは言います。
「責任とってね。」
おちゃらけて後先考えずに、好き勝手遊び呆けた夢のあと、この言葉はどん底に真っ逆さまに突き落とす威力があります。
まさに目が覚めるような言葉です。
あまりの大人気に、大量のグッズ販売やゲーム、パチンコ、スロット、ボードゲーム、ケータイゲーム、など多種多様な展開をして未だに人気のある、いわばオバケコンテンツとなっています。
その一端、2019年東京ガスのCMの動画があったので以下からどうぞ。
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予告編動画