自分がもっとも多感な時期にこの作品は公開されました。
それまでまったく興味のなかった政治や世界情勢をほんの少し見るためのきっかけになりました。
そして、人類の持つ可能性に希望が持てるのか?とその当時の世の中と照らし合わせるようになりました。
SFとして、人間ドラマとして非常によく出来ているガンダム作品です。
そしてよく出来ているが故に語る事が膨大にならざるを得ないのです。
なるべくざっくりと自分なりの解説など。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
1988年公開、富野由悠季監督作品。
ガンダムシリーズの主人公とそのライバル、アムロ・レイとシャア・アズナブルの最後の戦いを描いた作品。
テーマ曲は当時大人気の小室哲哉が所属していたTM NETWORKの「BYOND THE TIME」でも話題になりました。
人口増加に伴いスペースコロニーに人々が住み始めた頃、コロニーの内情も知らない地球住まいの特権階級が支配することに反発したスペースノイド(宇宙暮らしの人々)は地球連邦政府に反乱します。
スペースコロニー国家としてジオン公国を起ち上げて地球連邦から独立を宣言。地球連邦に対して宣戦布告しスペースコロニーをオーストラリアのシドニーに落下させ地域を壊滅に追いやってしまいます。
これが地球連邦軍対ジオン公国軍の戦争に発展。終結までに1年かかったことから「1年戦争」と呼ばれることになります。(TVシリーズ、劇場版、ファーストガンダムの世界観)
この後に「Zガンダム」、「ZZ」が続き、さらにその後の世界観としての「逆襲のシャア」です。
「逆襲のシャア」は「1年戦争」から14年後、シャアはジオン公国の中心ザビ家の生き残りとしてジオンの国家元首を務め国家名「ネオ・ジオン」を名乗り、地球に隕石攻撃を仕掛ける。それを防ごうとするアムロ、ブライトのロンド・ベル隊。
互いにそれぞれの信条と戦う理由により、敵対し、最終的に決着を付けるのが「逆襲のシャア」です。
この世界観を引き継いだ「ガンダム」シリーズを「宇宙世紀シリーズ」と呼ぶようになっています。
1年戦争中の作品では「ポケットの中の戦争」、「サンダーボルト」。直後を「0083」、「逆襲のシャア」の後を「UC」、「NT」、「F91」などがあります。
この作品はいろんな詳しい方がいろんな詳しい解説をされているので、ここでは電八的「ここだけ拾っとけば楽しめるポイント」に絞って語っていきます。
その中で恐らく「サイコフレーム」ってなんなのさ?って方がきっと多いと思います。
ざっくり語ります。
ガンダム世界では戦争用の兵器としてヒト型を「モビルスーツ」、それ以外を「モビルアーマー」というのを使って宇宙空間、スペースコロニー、地上、海中などどこでも戦争しています。
また「ニュータイプ」という概念が学術的に発表されテレパシー能力のようなものを有する人間が現れ始めています。
そこで戦争を有利に進めるために、相手の脳波を増幅して受信しやすくすれば相手の考えていることが判別できるようになります。
人工的に「ニュータイプ」の能力を強化する技術なんですね。
判別できれば行動を起こされる前に対処できるようになります。
ニュータイプはこれが自然にできてしまうヒトとして描かれます。
また、遺伝子操作により人工的な「ニュータイプ」として作られたのが「強化人間」です。
「逆襲のシャア」ではギュネイが強化人間です。
強化人間と同様に「ニュータイプ」を研究して開発されたのが「サイコミュ・システム」です。
電極のついたヘルメット様のものを装着することで周囲から読み取った脳波を増幅してパイロットに伝達するモノなんです。
まあ、簡単に言うと「相手の考えが読めれば、有利な上に弱点も突ける」という事です。
「サイコフレーム」はいわば、それの強化版です。
「サイコミュ」のいろんな弱点や使いづらい点を根本的に解決し、さらに鋭敏にヒトの脳波を感知することが出来るようにしたものです。
「コンピュータチップを金属粒子大にしたモノをコックピットのフレームに封じ込めた」というのがモビルスーツ開発会社アナハイムの開発担当オクトバーのセリフです。
コクピットを覆うフレームがサイコミュのヘルメットの替わりをするわけです。
しかもサイコミュ・システムよりも莫大な情報量を一瞬で扱う事ができるわけです。
感覚的には肩掛けの携帯電話の時代に「この板状の端末は携帯電話にパソコンとカメラの機能を持たせたスマホ」ですって紹介しているくらいだと思っていただければ分かり易いのでは思います。
アムロのサポートをしているチェーン・アギがあんまり謎過ぎる技術なのでオクトバーに調査用にサンプルをくれというのも納得です。
終盤にヒトの思い(脳波)を集めすぎてオーバーロードしたサイコフレームは緑色の光をオーロラのごとく放ち、物理的な力に変換され、地球に落下しそうなアクシズの半分を軌道外へ押し戻します。
これは「ヒトの思いはこれほどまでに強い。奇跡も起こせるほどに」というのを表現しています。
SFが好きなのは”これ”なんです!人の思いは奇跡を起こすっていうのを物語として見せてくれるところなんです。
科学的、計算に基づいたモノというのを「ヒトの思い」は超える事が出来るというのを描いています。
まさに「希望」ですよね。
今作中のセリフで「核の冬」というのが、出てきます。
いったい「核の冬」って何?と思いますよね!もちろん調べました!!
人類は兵器として広島や長崎に投下された原子爆弾や、さらに破壊力を増した水素爆弾なんかを開発してきました。
実に嘆かわしいことです。
原爆や水爆のことをまとめて核爆弾などと呼びます。
では、とんでもない破壊力の爆弾を爆発させるとどうなるのか?
大爆発と共に大量の土や灰、ホコリなどを塵として巻き上げます。この大量の塵は成層圏まで吹き上げられてしまいます。
成層圏まで達した大量の塵は落下せずに雲のように留まり、太陽からの光を遮断してしまいます。
その結果、地球は急速に冷え込んでいき、氷河期のような状態になっていきます。
これが「核の冬」と呼ばれるものです。
そして核爆弾以外にも「核の冬」を呼び込む方法があります。それが今作でシャアがやろうとしたことです。
そう、大質量の隕石を地球に落下させることです。
その昔、恐竜が絶滅した原因が巨大隕石の激突による「核の冬」だったと言われています。
シャアはこれを人工的に起こそうとしているわけです。
シャアは確実に「核の冬」を呼び込むために段階的に隕石落としをします。
物語冒頭に落とされた5thルナ、後半に落とそうとしたアクシズ、と隕石の質量と巻き上げられる灰塵の量と太陽光がさえぎられる割合などを綿密に計算して作戦としています。
何のために「核の冬」にしようとしたか?
それは地球からスペースコロニーの現状も考えずにただ支配している、地球人類を地球から追い出して同じ立場に立たせようということ。
また、今までに人類は地球を汚染させてしまったので、地球から人類がいなくなれば破壊され汚染された自然を時間はかかるが浄化再生できると言っています。
この作戦が実行できる程に支持されたのは、いかにスペースコロニーに住む住民たちに地球連邦政府に対しての不満が溜まっていたかの現れだったと言えます。
「地球で私腹を肥やして贅沢三昧の連邦政府の役人たちが、宇宙に上がった人々の苦労を理解せずに支配している」ためシャアを保護して、作戦実行のための予算や軍備をひそかにシャアに与えることになりました。
アムロ的には「革命は一部のインテリが夢のような理想を実現させようとする」と言ってます。
しかし実現させるために多数の人々が危険を顧みずに協力し合っている現実もあるんですよね。
シャアはもともと父ジオン・ズム・ダイクンのかたき討ちのために、名を変え仮面で顔を隠してジオン軍に属していました。
理由としてはザビ家がジオン・ズム・ダイクンを暗殺してジオン公国を乗っ取ったからです。
シャアの本名はキャスバル・レム・ダイクンであり、ジオンの息子だったのです。さらにセイラはアルテイシア・ソム・ダイクンが本名であり、シャアの実の妹です。
この辺りは、「ORIGIN」シリーズで詳しく描かれています。
その頃、小惑星基地アクシズはドズル・ザビ旗下にあり要塞化されていました。
1年戦争の最後、ア・バオア・クーの戦いにおいて実質権力の中枢であった、ギレン・ザビとキシリア・ザビを討ち取っています。(裏切りによる暗殺に成功)
しかしザビ家の直系の娘であるミネバ・ザビを擁立する一行がアクシズに逃げ延び、その後新たなるジオン軍として活動するための拠点としてアクシズを活用するようになります。
シャアにしてみれば、憎きザビ家が依って立つための拠点になっているアクシズは忌まわしいモノ以外の何ものでもなかったでしょう。
「行け、アクシズ! 忌まわしき記憶と共に!」というセリフにはシャアの怨念にも似た憎しみの炎から発せられた言葉なんですね。
ぶっちゃけ言います。
残念ながら「逆襲のシャア」に登場する女性キャラクターで幸せになる人はひとりもいません。
チェーン・アギはアムロの恋人的な存在として登場します。
しかし結局アムロはララァ・スンの幻影を追いかけていてチェーンにしっかり向き合う事はなかったです。その上、危険から守ろうとしたハサウェイに撃墜されてしまいます。
クェス・パラヤも父親と愛人に疎まれ、アムロやシャアに父の面影を重ねるがふたりに煙たがられてしまいます。
唯一の理解者はハサウェイなのですが、求めている父親像とはかけ離れているために受け入れることが出来ません。最期はハサウェイをかばってチェーンに直撃されてしまいます。
シャアを補佐する強化人間研究所所長のナナイはシャアに対して愛情を感じてはいるけれど、シャアからは愛情を得ることが出来ませんでした。
しかも自分でそれを理解している上で、シャアの命が消えていくことを感じて号泣しています。彼女のその後の消息は謎です。
ラーカイラムのパイロット、ケーラはアストナージとラブラブなのですが、ギュネイのヤクト・ドーガにやられてしまいます。
ちなみにチェーンが壊れたリ・ガズィで出撃した時にアストナージは爆発に巻き込まれてしまいます。
ネオ・ジオン軍パイロットのレズンは強化人間よりも自分の方が戦えると思っていましたが、あえなく艦砲射撃にやられてしまいます。
ミライと娘のチェーミン、そしてブライトは後にハサウェイを失うのが決定づけられてしまいます。
きっとこの映画をご覧になった方は「どっちが正義?」とか「正しいの?」とか思われるのだと思います。
自分もいまだにどちらが正しいというのは答えは出せていません。
というか、これ答えが出る訳ないんです。
なぜなら、「正しさ」はその人の立つ立場によって違うからです。
シャアは地球から宇宙のスペースコロニー(植民地)に住んでいる人々をその苦しさすら知らないままにただいたずらに支配するだけの地球に住む人間たちを排除したい。支配だけならいざ知らず地球の環境を汚染し続けるのは許せないって主張。
だから、隕石を落として地球を「核の冬」にして一旦浄化する(地球上から人類を一掃する)という考えです。
それを止めるアムロは、「シャアの言い分は分かるけど殺す必要はあるのか?それも地球の環境を破壊してまで?」という考えです。
二人とも、地球の環境を守り、しかも一方的な支配ではなく、お互いに交感できるようになったらいいと思っているのです。
ですが、育ちや考え方の違いで対立しています。
二人の対立構造はこんな感じですかね。
物語上は
シャアの苦しむ人間の数を至急減らすやり方は腫瘍摘出手術で出血もするし(大量の死人が出る)麻酔があっても傷口が癒えるまでの激痛(環境に与えるダメージ)がある。ただし短時間で済む。
アムロの苦しんでいる人がすぐには減らないが死人を出さずに対話により時間を掛けてゆっくり変えていくやり方は対症療法で食事療法や体質改善に近い。
自分たちが生きている内には改善されないかもしれないが死人はごく少数ですむ。そして一度変われば元に戻るようなことはない。
種族全体の1000年先まで考えた場合はアムロの考え方が、今、目の前の愛する人々の事を第一に考えるのであればシャアの考え方が。
これってどちらが正しいとかあるんですかね?
ふたりの考え方を上手くいい方向に導けたはずのララァ・スンは1年戦争ですでに亡くなっています。それもふたりの目の前で。
ただ、自分は「重力に魂をひかれてしまう」事のないように気を付けたいなと思います。
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