熱いオファーいただきましたので、今回は「レジェンド/光と闇の伝説」について語っていきたいと思います。
「レジェンド/光と闇の伝説」はデビューしたばかりのトム・クルーズが初々しい姿を見せてくれます。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
1985年公開のリドリー・スコット監督作品。北欧神話を題材にしたファンタスティックj・アドベンチャー作品。
デビューして間もないトム・クルーズが主演している事もありますが、非常に美しい情景や特殊メイクによる秀逸なデザインなどが高評価で話題に。
世界を暗黒で埋め尽くす野望を抱く魔王は、野望を妨げる存在である森に棲むユニコーンの抹殺を小鬼に命じる。その頃、森では清純なリリー王女と若き青年ジャックが動物と触れ合っていた。ジャックはユニコーンを見せるため、リリーを秘密の場所に案内する。しかし、森には小鬼が迫っていた。小鬼が1頭のユニコーンを倒すと森は嵐に見舞われ、リリーは小鬼に連れ去られてしまう。ジャックは森の妖精たちとリリーの救出に向かい……
Googleより引用
この物語は光と闇が対立しているという物語です。
光の眷属である、ユニコーンや妖精と人間。
闇の眷属である、ロード・オブ・ダークネスと魔物たち。
ダークネスの言い分では、元々は静かな闇の世界だったものが、光が生まれ、光に拒否反応がある闇の眷属たちは追いやられてしまったということ。
だから、光の眷属の象徴であるユニコーンを亡き者にして、闇の世界を取り戻すという思惑でした。
闇の眷属たちは追いやられてしまった、恨みを抱いている哀れな存在なんですね。
ラストシーンでは、リリーの指輪を泉に投げ落とす所に時間が巻き戻っています。そしてジャックは指輪を見つけ、リリーの元に行きます。
これでジャックはリリーが与えた求婚者への試練を乗り越えたことになります。
眠っていたリリーが目を覚まし、2人は森を後に去っていきます。
その姿を森の奥で妖精たちが手を振って見送るというところで終了。
妖精たちと共に、時間が巻き戻ったことで蘇ったユニコーンも一緒なんですね。
解釈するに、闇を滅ぼすのではなく、光と闇は常にバランスを取り合うこと、つまり調和が必要だという事みたいです。
闇の眷属が自分達に恨みを抱いているのは分かっているので、ロード・オブ・ダークネスとの対決の時も殺してしまうのではなく、一時的に追いやって、時間を巻き戻します。
恐らく時間が巻き戻っているので、ロード・オブ・ダークネスも蘇っているはずです。
しかしジャックと妖精たち、ユニコーンはダークネスの野望が分かっているので、もはや陥れられることもなくなったということなのだと思います。
慈悲の心があるから、光が正義ではないというのが語られている、意外と深い物語です。
電八的な感想をここで。
まず、トム・クルーズがデビューしたばかりで、とにかく若いです。ジャック役は森に住む嘘をつくことも知らない少年という役柄ですが、若さが見た目のピュアさを強調して、マッチしていると思います。
ただ本人が役を嫌がっているせいか、演技が少しぎこちないように見受けられます。
若いからこそのシャイな一面だったのではと思いたいところです。
そのほかについては基本的に素晴らしいと思っています。
当時はCGなんてほぼ使うことが出来ない時代です。全てをアナログで撮影しているわけです。
ファンタジー世界であるので多少オーバーな表現はあるものの、違和感を感じるような絵作りではなかったと思います。
設定や言動などはカットの順番を差し替えたり、スポンサーの意向を取り込まざるを得ない状況のせいで、矛盾しているところが散見されます。
しかしそれ以上に美しく景色と素晴らしい造形だと思います。
闇の王の居城のシーンは、闇の王の巨大さや邪悪さを際立たせています。しかもどのカットも絵画のような美しい構図で撮影されていて、ほわーっとなってしまいます。
この物語ではなんと、救い出すべき姫・リリーが闇堕ちしてしまいます。
そしてこの過程が非常にスタイリッシュに描かれています。とてもキレイでカッコいいシーンです。
ドレスを着た漆黒のマネキン(?)が踊りながらリリーに近づきます。
そしてリリーとマネキンは同化して、黒いドレスを着てモノクロメイクになったリリーが見せた表情が上記画像。影といい、目の輝き方といい、「ああ、変わってしまったんだ」というのが実感させられるシーンです。
そして、彼女は黒いマネキンと同様にクルクルと踊り狂います。
リリー役のミア・サラ。彼女は今作がデビュー作であり、大抜擢でした。イタリア系のアメリカ人でクリッとした目が可愛い。
ジャン・クロード・ヴァンダム主演の「タイムコップ」で第21回サターン助演女優賞を受賞。
ガンプ役のダーフィト・ベンネント。森の妖精のちょっと意地悪い感じとかよく出てていい演技だと思います。
子役時代に未成年でありながら成人相手に性行為を演じ、これはその後に物議を醸したことがありました。
基本的に脇役での活躍が主だったようです。
ウーナ役のアナベル・ラニオン。人間の好きという感情と妖精の好きという感情には若干違いがあるというのを演じて見せてくれます。
退廃的な未来都市像でSF映画のイメージを一新させた「ブレードランナー」(82)や、不安と恐怖を形にした残酷な異星生物の恐怖を描いたSFホラー「エイリアン」(79)、など、今や古典として後世に影響を与えつづけている名作を、手がけた監督リドリー・スコット。
そんな昇り調子の彼が上記に次ぐ作品として取り組んだのが、作り物ではない写実的なファンタジーでした。
そこで脚本に70年代に寓意に満ちた幻想小説を発表していたウィリアム・ヒョーツバーグに目をつけました。
二人は「ブレードランナー」のイメージ原点のひとつとなっているのが1973年に発表されたヒョーツバーグの小説“Symbiography”だったので、その時に知り合っていました。
依頼を受けたヒョーツバーグは誘惑に駆られて暗黒世界に堕ちていく若者の姿を脚本化します。
もともと退廃的でダークな作品が得意なリドリー・スコットですが、基本的にキラキラ輝いて美しいファンタジーを制作会社やスポンサーが望んだため、仕方なしに希望に寄せて撮影を進めます。
明るく幻想的なシーンでは必ず何かが宙を舞っています。それも大量に。得意ではない絵作りをごまかすために空白を埋めるように大量に舞わせます。
さらに撮影した映像を制作会社の意向で30%近くもカットされてしまったり、音楽を変えてしまったがために音楽担当者をもめてしまったりと散々な目に合います。
「遊星からの物体X」などを手掛けたロブ・ボッティンの特殊メイクによるクリーチャーの評価は高くてアカデミー賞メイクアップ賞にノミネートされています。またティム・カリーが演じた”闇の王”ロード・オブ・ダークネスは米Yahoo!ムービーの「偉大な映画のクリーチャー20」にも選ばれ、現在でもフィギュアなど関連商品がリリースされるなど人気が高いです。
特に頭部の造形が素晴らしいです!
また、闇堕ちしたリリーも黒を基調とした襟が大きく胸がばっくりと開いた大胆なドレスのデザインが美しいです。
闇堕ちしたリリーのこの表情も下からのライティングとメイクで妖しさが抜群になります。
森のシーンでは、いろんなものが宙を漂い舞います。
シーンに合わせて綿毛のようなもの、花吹雪、雪などです。過剰ではないかと思うくらいの量がヒラヒラ漂い舞っています。
「ブレードランナー」のユニコーンのシーン自体が、ファンタジー「レジェンド/光と闇の伝説」にもユニコーンが登場するので、「レジェンド」の流用では?という憶測もありました。
しかし、「ブレードランナー」の92年の「ディレクターズカット」上映に向けた修復作業の過程で、このユニコーンの場面だけスタジオの倉庫で発見され、ちゃんと「ブレードランナー」のために撮影されたフッテージだったことが明らかにされています。
これは完全に推測なのですが、ユニコーンの角に関してはプロップスを流用しているのではないかと思っています。
「ブレードランナー」のユニコーンのものと同じデザイン、大きさ、形をしているように見えます。
上記、「ブレードランナー」の動画と「レジェンド/光と闇の伝説」の画像を比較するとそっくりなのがわかります。
画像左のガンプが持っているのが、ユニコーンの角です。
実はこの映画にはバージョンが二つあり、それぞれに音楽の違いがあります。
1つは「国際版」と呼ばれるもので、ジェリー・ゴールドスミスが作曲したオーケストラとコーラスを用いた美しい音楽が流れました。この音楽は映画の幻想的な世界観や登場人物の感情を豊かに表現しました。
もう1つは「アメリカ公開版」と呼ばれるもので、タンジェリン・ドリームが作曲したシンセサイザーを中心としたロック調の音楽が鳴り響きました。この音楽は映画のアクションやサスペンスのシーンに合わせてテンポや雰囲気を変えました。
このように、同じ映画でも異なるバージョンが存在することは珍しいことではありませんが、この映画の場合は製作サイドの思惑や観客層の違いが大きく影響したと言えます。
アメリカ公開版の主題歌としてブライアン・フェリーが歌った『Is Your Love Strong Enough?』は、後にハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルスによってカヴァーされたバージョンが『ドラゴン・タトゥーの女』の主題歌として使用されました)
非常に美しいビジュアルと作品世界観が魅力的な今作。続編やリメイクなどを望む声も多いようです。
さらに「トップガン」や「ゴーストバスターズ」などのように40年経過しても続編が制作されることもありますから「ひょっとすると!」と期待するファンもいると思います。
そこで続編やリメイクの可能性はあるのかを考えてみます。
トム・クルーズ的には黒歴史的な作品のようだ。
確かに、役どころ的に「森の若者」ということで、いわゆる野生児のイメージがあるジャック役は、見た目にはおくびにもキレイとは言えない姿です。
しかも入れ歯を入れて、出っ歯にさせられ、その上、ずぶ濡れになるシーンなどがあり、本当に小汚い姿です。
最後のシーンまでには入れ歯は外され、いつの間にか美しく逞しい青年として描かれていますが、トム・クルーズ的には本当に嫌だったみたいです。
「国際版」と「アメリカ公開版」の音楽の違いは、ユニヴァーサルのシドニー・シャインバーグ会長が「若い世代に訴えるべきだ」という主張をリドリー・スコット監督が受け入れ、ゴールドスミスに何も言わずに変更しました。
ゴールドスミスの音楽を勝手に変えた結果、ゴールドスミスはこれに激怒しました。リドリー・スコット監督は『エイリアン』でもゴールドスミスの音楽を変えたことがあって、それ以来ゴールドスミスはスコットと2度と仕事をしなくなります。
スコットは「ヴァラエティ」紙の広告第1面を購入して、ゴールドスミスに対する謝罪文を掲載しました。しかし怒りが収まらないゴールドスミスは「なんで許す必要がある⁈」と反論広告を打ちます。この一件は、画作りは素晴らしいが、音楽の面では問題が多いというリドリー・スコットの特徴が出た事件でした。
しかも、もともと劇場公開前のオリジナルフィルムは約140分という長編だったが、製作サイドの思惑で大幅に(3分の1も!)カットされ、「国際版」では94分に、「アメリカ公開版」では89分に再編集されました。
尚、本作は後に114分の「ディレクターズ・カット版」としてアメリカでDVDリリースされています。
こういった事があって、作品への評価も今ひとつとなってしまった事をトム・クルーズは気にして、いまだに「あの作品については語りたくない」と今作については語る事はほとんどありません。
ここまでで、続編に関してはトム・クルーズの出演は見込めないことが分かります。ましてやすでに40年も経っているし、物語もキレの良いところで終わっているので続編は恐らく制作されることはないでしょう。
リメイク作品に関してはオールキャスト入れ替えとCGを使って、完全リメイクはできるかもしれません。
しかし今作の美しいビジュアルやデザインのアイディアを超えるものを作るためにはたくさんの事を変更しなくてはならないと思います。
むしろ、全く新しい作品として制約なく制作した方がいい作品になるでしょう。つまりリメイクにもあまり意味が見出せないと思います。
まとめると、続編やリメイクは製作され得る可能性は極めて低いと言わざるを得ないでしょう。
いろいろと、曰くある作品ではありますが、ビジュアルとデザインが群を抜いているのは間違いありません。
不思議と夢の中にいるみたいな雰囲気を醸し出しています。
電八的にも印象が強くてけっこう好きな作品です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
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