今回紹介する映画は「シャン・チー テン・リングスの伝説」です。
マーヴェル映画の中では恐らく異色の作品の部類かと思います。
2021年公開、デスティン・ダニエル・クレットン監督作品。
主演のショーンをシャン・チーを演じるのはシム・リウ。
映画よりはテレビドラマでの出演でアメリカでは有名な俳優。
敵役で父親のウェンウーをトニー・レオンが演じています。深い悲しみ故に過ちを犯し続ける悲しい役どころをキッチリと演じています。
シャン・チーには他のスーパーヒーローたちと違ってスーパーパワーはありません。
原作も映画も父親が教え込んだ暗殺用武術だけが彼のパワーです。
つまり、彼はミュータントでもなく、宇宙人でもなく、超能力もなく、パワードスーツもなしの素の人間です。
何がいいって、ここですよね!!
修行で身に着けた技のみで戦うヒーローなんです。
映画の場合はテン・リングスを受け継ぐのでまた少し話が違うのですが。
しかも彼は父親がテン・リングスの力で1000年も生きている超人です。母親はター・ロー村という異次元に存在する村出身の異次元人なので、普通の人間と何か違っているのかもしれませんが。。。
この辺は細かく語られていないです。カンフーの天才にして達人な事に違いはありませんが。
原作では魔法を使わずに神に挑めるか数少ない人間のひとりなのだそうです。
いろんなカンフー映画へのオマージュが見られるのも楽しみのひとつです。
冒頭シーンでウェンウーが無数に飛んでくる矢の中をテン・リングスの力を使って薙ぎ払いながら駆け抜けていくシーンは「HERO」さながらです。
原作でも多用している技ですが、バスの中で両足を開脚して二人の敵を蹴り上げる技などはよくカンフー映画で見る動きです。
マカオのシーンでビルの側面の竹の足場での戦闘シーンもカンフー映画ではよく観ます。特に「ラッシュ・アワー2」を思い出します。
テン・リングスのアジトでの集団での訓練シーンは「少林寺」とか「燃えよドラゴン」などでしょう。
片手が県になっている、レーザー・フィストは「燃えよドラゴン」の敵役ハンですね。
そもそもシャン・チー自身が原作マンガで発表になったのが1973年で完全に同年公開された「燃えよドラゴン」のブルース・リーを意識したヒーローとして誕生しています。
母親、イン・リーと叔母イン・ナンの使うター・ローの武術は太極拳とか八卦掌のような動きを模しているのが分かります。
円の動きで力を受け流し、集中させれば大きな力となるような。「グリーン・ディスティニー」の竹林の上での戦闘シーンや「グランドマスター」のチャン・ツィイーが演じていたような動きです。
他にも細かいところを上げればキリがないでしょう。
マーヴェル作品の中ではスーパーパワーなしの珍しいヒーローです。
訓練で身に着けた力と技だけで戦うので原作ではキャプテン・アメリカやウルヴァリンなど他のヒーローに武術指導する事があるそうです。
なんだか、「頑張って修業すれば自分もいつかヒーローになれるかもしれない」と希望のようなものを持たせてくれるキャラクターです。
またシャン・チーは作家ごとにけっこう違いが出ますが、ブルース・リー好きが描くことがどうやら多いみたいです。
「描きたいから描く」キャラクターなんですね。
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