SF作品の中でも、少し問題作とされているのが「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズです。
とはいえ、人気が高くSF作品としても評価が高いです。
今回は「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズを原作と共に紹介いたします。
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※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
※注意:この記事には気分を害する恐れのある画像や映像が含まれます。ご注意ください。
1997年公開。ポール・ヴァーホーベン監督のSF作品。
戦争賛美ともとれるような過激な描写ですが、監督にまったくそんな意図はなく、いわゆるパロディ作品として撮影したというインタビューがあります。
大ヒットを記録して、人気の高さが浮き彫りとなりその後のシリーズ作品の製作へとつながっていきます。
非常に高度なSFX、VFX効果を巧みに使いこなし、バグが現実に存在するような圧倒的な映像を作り出したいるのも話題になりました。
特殊効果は「ジュラシックパーク」のフィル・ティペットが担当。
あまりの過激な血みどろ映像のため、一度問題となり、少し映像修正をしたというような経緯もありました。
時は未来。ハイスクールを卒業したジョニー・リコ(キャスパー・ヴァン・ディーン)は地球連邦軍へ志願、機動歩兵隊に配属される。折しも、巨大昆虫型エイリアン=バグスが地球に攻撃を仕掛けてきた。反撃すべく敵の母星に上陸した彼らを待ち受けていたのは、地平線を埋め尽くすバグ軍団だった!
Amazonプライムビデオより引用
ロバート・A・ハインラインの著書「宇宙の戦士」。
アラクニドと呼ばれる昆虫型地球外生物との戦争において若者ジョニー・リコが兵士として成長していく姿を描いています。
SF要素として宇宙船から惑星上に降下カプセルで降下して戦う「機動歩兵」と彼らが装備するパワードスーツが大きな特徴です。
SFファンの間で不朽の名作として人気が非常に高い作品です。
映画でのアカデミー賞にあたる、SF小説の大賞であるヒューゴー賞を受賞しています。
日本においては1988年にOVA作品としてアニメ化されています。
原作者のロバート・A・ハインラインは原作「宇宙の戦士」の中で「暴力は歴史上最も多くのことに決着をつけてきた」というセリフで説明しているように、暴力こそが解決するのではなく、良くも悪くも決着を付けることが出来るという現実的なことを語っています。
話し合いでは決着つかないままに延々と時間だけが過ぎて行ってしまう事がよくあります。この状態ではもちろん解決などは見込めません。
しかし暴力は、とにかく決着させることができます。
どれだけ悲惨で解決にならなくとも前進することが出来る状態にはなるという事です。
この作品世界は凶悪な宇宙生物「虫(バグ)」との戦争中であり、彼らから身を守るためにはあらゆる現実的で即効性のある戦略や戦術をとっていく必要があるわけです。
「暴力反対」などと言っていたら、あっという間に人類は「虫(バグ)」に全滅させられてしまうでしょう。
そのため、軍に属する人間には特権が与えられます。あらゆる面で優遇されるようになっています。
もちろん非戦闘員もごく普通に生活していくことはできますが、反戦や軍国主義を批判するような言動は許されません。
言論統制や「兵士は勇者である」や「兵士になって人類の役に立とう」などの教育があらゆるメディアなどを通して行われるようになっています。
原作者ハインライン自身も右翼団体で活動を行っていた人物としても有名です。もともと海軍兵学校を出て、空母レキシントンに乗り組んだりした経験も作品に大きな影響を与えています。
ちなみに以前、書いた「夏への扉」もハインライン原作です。
だいぶ作風が違うのが不思議であり、作家としてのすごさみたいのを感じます。
1938年生まれのポール・ヴァーホーベンはオランダのハーグ出身です。
彼が幼少の頃、地元のV2ロケット基地が爆撃を受け、ハーグがナチスドイツに占領されます。
焼け野原となって周囲がその犠牲者だらけになってしまったという体験から死体に慣れてしまったとインタビューで答えています。
彼の映画でポンポンと首や手足が飛ぶのはそのせいもあります。
そんな彼の体験や考え方を思い切りぶつけたのがこの作品という訳です。
今作はあまりに戦争賛美に傾いているという批判が相次いでしまいます。
しかしこの作品について監督はインタビューで「この作品はナチのプロバガンダ映画のパロディです。」と答えています。
まあ、「ナチみたいなバッカなことやってる映画だな~」と笑い飛ばしてくださいという事なんですね。
監督はこの作品を「エソレティック映画」と呼んでいます。
意味は「分かるやつには分かるが、分からないやつには分からない映画」だそうです。
ハインラインの多大に右翼思想に影響を受けた「宇宙の戦士」を映画化するにあたり、右翼的な思想やファシズム的なものを茶化して映画化しています。
ちなみにポール・ヴァーホーベン監督作品は名作ぞろいです。
『氷の微笑』『インビジブル』『トータル・リコール』『ショーガール』『ロボコップ』など。
どれも過激にミステリアスにセクシーな映像が魅力的な作品です。
1作目はポール・ヴァーホーベン監督に脚本をエド・ニューマイヤーが担当しています。
2作目は1作目の特殊効果を担当したフィル・ティペットが監督を務め、
3作目は1作目の脚本家エド・ニューマイヤーが務めました。
分かってる人間がツボを押さえるように製作しています。
この後は、フルCG作品の「スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン」、「スターシップ・トゥルーパーズ レッド・プラネット」と続きます。
「機動戦士ガンダム」シリーズに登場するロボット兵器は人型のものを中心に「モビルスーツ」と呼ばれています。
これはもともと「宇宙の戦士」の「機動歩兵」が装備している「強化防護服(パワードスーツ)」が由来となっています。
実はポール・ヴァーホーベン監督もこれを「スターシップ・トゥルーパーズ」1作目に登場させたかったのですが、予算の都合で断念しています。
3作目になってようやくパワードスーツ「マローダー」として登場します。
以上の画像が、映画版のパワードスーツ「マローダー」です。映画の中では大活躍なのですが、いかんせんデザインが独特で非常に好き嫌いが分かれます。
かっこいいのかと問われると疑問があります。
しかもこれ装着者(?)もしくは搭乗者が操作を行うので、厳密にはパワードスーツではないんですよね。
「神経接続」するらしいのですが、普通に操作して動かしています。
以下の画像は原作の表紙やアニメ版のパワードスーツです。
こちらはもちろんパワーアシスト式(自身の身体の動きを増幅する方式)です。
あくまでも大量生産の汎用機であるのが分かります。
ちなみに兵士によりいろんなタイプが存在しますが、基本の型にアタッチメント式の装備を取り付けたという感じデザインになっていました。
かなりのミリタリー好きがデザインしたことがうかがえます。
プラモデルもかなりの人気がでました。
「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズに登場する「虫(バグ)」たち。
原作ではアラクニド・バグと呼ばれていて、クモのような形態のエイリアンのみでした。
映画版では、いくつか種類が存在しています。それぞれに役割があります。
驚異的な生命力と攻撃力を持つ、グンタイアリのような性質を持ったバグ。一匹だけでもしぶといのに数万~数十万匹単位で行動する。圧倒的な数と生命力と攻撃性で拠点制圧・侵略などを行う。
大きな羽根を持っていて空を滑空します。バッタやキリギリスのような外見をしています。
お尻からはプラズマエネルギー弾を発射して超長距離対空射撃をおこないます。映画では軌道上の母艦などを地上から攻撃して撃沈していました。
昆虫のユミアシゴミムシダマシに似た形をしています。ウォリアー・バグを補佐する形で行動します。
頭部からオレンジ色をした腐食性の有機酸を火炎放射器のように放出することができます。
アラクニドの頭脳階級で、作戦立案から指揮などを行っていると考えられます。
また頭部に折りたたんで収納されている鎌状の口吻を人間の頭部に突き刺し、思考を読んだり、脳を吸い出したりします。
ピンクがかったブヨブヨの体表で、自力では移動できないので奥地に隠れていることがほとんど。
カメムシに似たバグ。自力移動できないブレインバグを搬送する役目で戦闘はしない。
アラクニドバグズとは異なる(作中の教師の台詞による)巨大な昆虫。地球の学生達が学校の授業でこれを解剖するシーンがある(学生二人一組で一匹を担当)
Wikipediaより引用
ウォリアー・バグの独特の鳴き声は、音源にエレキギターを使用しています。
作中で兵士が使っているライフルは盛田(モリタ)式ライフルと呼称されています。
SF映画なので弾はレーザーとか美オームの類かと思いきや、実弾で7.62x51mm弾だそうです。
映像技術にソニーが関わっていてソニー創業者である故・盛田昭夫名誉会長(公開時は存命)の名前からとって名付けたのだとか。
また日本語字幕および吹き替えではそのまま「ニューク弾」と訳されているが、nuke(ニューク)とはnuclearの略で核兵器を意味しています。
バグによる人体切断などの残虐なシーンがふんだんに登場し、また男女混合の全裸のシャワーシーン(ただし局部は見えない)もあり、アメリカではR指定(成人向け)となりました。
社会の描写にいろいろ批判がありますが、皮肉にも完全な「男女平等」が描かれています。
軍の構造には男女差がまったくないんですよね。完全に能力で判断されます。
最前線の機動歩兵から、空母や戦艦のパイロット、情報部員、隊長や司令官、大統領などすべての役職や職業において、純粋に能力で評価・判断されています。
是非ご覧になってください。
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