2023年4月現在、世界は「ChatGPT」などの「AI」、いわゆる「人工知能」の話題で持ちきりです。
そこで今回は、そのままのタイトルの映画「A.I.」を紹介したいと思います。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
2001年公開のスティーブン・スピルバーグ監督のSFドラマ作品。
「シックス・センス」のハーレイ・ショエル・オスメント主演作品。
もともとは「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリックが企画・原案だったものを彼が亡くなってしまったため、スティーブン・スピルバーグが監督として引き継ぎ映画化。
近未来の世界を舞台に、ロボットと人間の共存を描き出しています。主人公のロボット・デイビッドを演じたハーレイ・ジョエル・オスメントの演技が話題となり、アカデミー賞にもノミネートされました。感動的なストーリーと未来世界を描いた美しい景色の映像美が魅力の作品です。
近未来、人類は生活のあらゆる場面で“メカ”と呼ばれるロボットの世話を受けていた。最新型の子供ロボットであるデイビッドは、引き取り先の家族を無条件に愛するようプログラムされていたが、その愛を受け入れてもらえず、結局捨てられてしまう。
Filmarksより引用
「鉄腕アトム」などのファンであったキューブリックは「2001年宇宙の旅」の撮影に向けて、手塚治虫に未来世界のデザインを任せたい旨の依頼の電話をします。
しかし、手塚治虫は「100人もの社員たちを食わせてやらなくちゃならない」と忙しさを理由に断ります。それを聞いたキューブリックは「手塚には100人も子供がいるのか!それは大変だ」と勘違いもあり依頼を断念したのでした。
「2001年宇宙の旅」では描き切れなかったものがあったキューブリックは「A.I.」の企画を立ち上げます。
キューブリックはスピルバーグを監督に指名して、自分はプロデュ―サーをするつもりだったので何度も打ち合わせを行います。その時スピルバーグに「自分の後継者は君だ」と言っていたそうです。
しかし間もなくキューブリックは亡くなってしまいます。
その後、スピルバーグがキューブリックから「A.I.」を引き継ぎ撮影することになりました。この時、スピルバーグももちろん「鉄腕アトム」の大ファンだったので、物語の筋が「ピノキオ」で設定は「鉄腕アトム」をなぞったものになっています。
カルロ・コッローディの児童文学作品『ピノッキオの冒険』。
ゼペット爺さんが作った木の人形は、自分の意志でしゃべり、動き出す。ゼペット爺さんは彼を「ピノキオ」と名付ける。ピノキオは騙されながらも苦難を乗り越え、日々成長します。最期に夢に現れた妖精によって人間になったというお話。
これは、アンドロイド(自動人形)で愛情を持っている「A.I.」のデビットと一緒です。
しかも彼は母親に捨てられてしまってから、ピノキオのように騙されたりしながら苦難を乗り越えていきます。
最後には人間にしかできなかった”涙を流して”います。つまり人間になれたという話で、「ピノキオ」とほとんど一緒の物語構成になっています。
ちなみにブルーフェアリーもDisneyアニメの「ピノキオ」に登場する妖精がモチーフになっています。
手塚治虫原作の漫画・アニメ作品。「アストロボーイ」というタイトルで海外でも広くテレビ放映されていました。
天馬博士は交通事故で死んでしまった息子の代わりに見た目そっくりのアンドロイドを作り上げます。
それが「アトム」です。しかし天馬博士は息子と同じようには愛せずにアトムを見捨ててしまいます。
キューブリックとスピルバーグも家庭に問題を抱えた幼少期を過ごしていたので、共感をもっていたのでしょう。
そして、アトムは人間を愛するようにプログラムされています。人間のためにロボットからの脅威から人々を守ります。しかし自分が人間ではないという事に悩み、しかもロボット側からも人間の味方をするからという事で仲間とは認めてもらえなくなってしまいます。
アトムの疎外感や孤独は両監督に共通するものであり、「A.I.」というふたりの共同の作品に大きく影響を残しています。
アンドロイドのデビットは瀕死の息子の代わりに夫婦が購入します。愛情をプログラムされているデビットは夫婦を両親として愛します。しかし夫婦によって捨てられてしまうのです。
その後、「人間になれば愛してもらえる」と考えたデビットは人間になるために願いを叶えてくれるという「ブルーフェアリー」を探す旅を始めるわけです。
「2001年宇宙の旅」では、宇宙人は姿を現しません。しかし撮影前のイメージボードなどには宇宙人のデザイン画が残されています。
これが「A.I.」のラストシーンに登場してデビットと接触する2000年未来の人工生命「スペシャリスト」たちとそっくりの針金人間のようなデザインなんです。
また、「2001年宇宙の旅」のラスト、デビット・ボーマン船長がモノリスによりスターゲイトを通り、「彼ら」の元に到着した時に、「白いホテルの部屋」に招かれます。
これはボーマン船長の記憶から、「彼ら」が再構成したものだと原作「2001年宇宙の旅」に書かれています。
「A.I.」もラストシーンでデビットは「スペシャリスト」たちに望んでいた母親との再会をクローン技術と仮想現実で実現してもらっています。その時はデビットの記憶を元に物語当初の家を再構成してその中で再会しています。
キューブリックは生前に「2001年宇宙の旅」で描き切れなかったことがあって、それを描くために「A.I.」を立ち上げたとインタビューに答えているそうです。
つまり、「A.I.」のラストシーンに登場する「スペシャリスト」たちは「2001年宇宙の旅」の「彼ら」ということになります。
偶然か、両作共に主人公の名は「デビット」です。
デビットのシルエットが「A.I.」という文字を形作っているんですよね。
上記の予告編の動画を見ていただくと分かるんですが、最後にロゴが出る時に「A」の中からデビットが一歩右に歩いて、「I」になるんですよね。
「A」は人工物を表していて、そこからデビットは「I」になります。
「I」、つまり人間になるというのを表しているんですよね!
よくできたデザインですよね~。
さらにポスターやBDなどのジャケッとで白バックに青い瞳のデザインのものがあります。これも秀逸だと思います。
いや、この映画はあかんです!
デビット役のハーレイ・ジョエル・オスメントが可愛すぎて、むごい目に合わされるのを見ていられなくなります。
子供がひどい目に合っているのを見たら、誰だって可哀そうだと思うでしょうが!反則だよ!!と思ってしまいます。
最後もハッピーエンドかと言われると、「どうなのさ!?」って疑問が拭えません。
実際に同時期に「アンドリューNDR114」という映画が公開されています。こちらはロビン・ウイリアムズ扮するアンドリューというアンドロイドが主人公です。
こちらも人間になりたい、理解したいという欲求を持ち、長い年月を経過して最終的に人間と同じ「死」を得るというお話です。
こちらは満ち足りた状態で、望んで「死」を迎えています。
両作共に共通したテーマがあり展開的に似通っている部分があるんですが対称的です。
もちろん別作品なので違っていていいんですが、「A.I.」もハッピーエンドだったらと思わずにいられないです。
後は、個人的な文句です。
音楽ず~~~~っと流れてる。ちょっと一息ってシーンがないです。めっちゃ疲れます。
さらに「お母さん」をず~~~っと叫んでます。
電車で赤ちゃん泣いてると、「うるさい!!」って思っちゃう人の心理ってこれか?って思うくらいです。ちょっと疲れますね~(´;ω;`)
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
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