みなさんは大仁田厚というプロレスラーをご存じだろうか?
大概の方が、血みどろになって訳の分からんことを叫んでいるプロレスラーというイメージではないだろうか?
間違ってはいないが、もう少しだけ踏み込んで見てみると実は伝説を生み出した英雄に等しい存在だという事が分かると思います。
※電八はあくまでもプロレスファンであるという前提のもとに語っています。
プロレスに対してよくある声として、「あんなのインチキじゃないか!」「実戦じゃ使えないよ!」など「本格的な格闘技ではない」という声が多い。
それは、あくまでも過激「風」であり、本当の過激な戦いがそこにあるという風には見え中田からなのかもしれません。
自分は「王道プロレス」は競技として楽しむもので、実戦という血なまぐさい殺し合いを観るものではないと思っています。
しかし、ベビーフェイスとヒールという役割や、こうすると派手に血が出るが痛みはそれほどではない、みたいなことが情報として巷に溢れるようになると「んんむ!」と悔しさをかみ殺すプロレスファンがいたことは確かでした。
これは今でも続く、「王道プロレスの強さ」に対しての猜疑心がくすぶり続ける結果となっています。
ここ30年、王道プロレスのリング上でもえげつなさは増すばかりです。過激さを追い求める流れが入りつつあるからだと思いますが、女子プロ含め2000年以降リング上で亡くなる選手が出始めているのはそのせいもあるかもしれません。
自分は親日も全日も好きで、そこから派生した幾多の団体もある程度は追っています。
好きとか嫌いとかという事ではなくそういった時代の流れがあったという事なのだと思います。
そんな中、とんでもない過激さでデスマッチを行うFMWの選手はリングでは亡くなっていないのではないか?
マンガ「キン肉マン」はプロレスをモチーフに超人たちが命がけで過酷なデスマッチを戦い抜くという物語でした。
それを生身の人間がやってのけよう!というのが大仁田厚が旗揚げした団体FMWの真骨頂でした。
キーワードに、「有刺鉄線」、「電流」、「爆破」、「地雷」などが並びます。
ひとたび試合が行われ勝敗が決してもそこには選手が血と汗とでドロドロのボロボロになった姿があるだけという凄まじいものです。
当時、格闘技ブームが盛り上がり、プロレスは苦難の時代でした。
新日本プロレスは対格闘技の試合を行い、全日本プロレスはそれはもはやプロレスではないと王道を貫こうとしていました。
そこで「王道の魅せるプロレス」と「格闘技のようなリアルさと過激さ」を融合するものとして生み出されたかどうかは分かりませんが、「邪道プロレス」が大仁田厚によって生み出されました。
実は大仁田厚は全日本プロレス時代にひざの故障で引退し、その後復活してFMWを旗揚げしています。
その後、引退しては復活しを繰り返し、7度の引退と7度の復活を遂げました。
現在でも現役のデスマッチレスラーとして未だにリングに上がり続けています。
大仁田vs天龍戦を生で観戦いたしました!
覚えているのはドリーファンクJrの外野席遠征とハヤブサたちの欽ちゃんジャンプ!
そして大仁田厚vs天龍源一郎のノーロープ有刺鉄線金網電流爆破デスマッチ!!!!
ロープを排し、その代わりに張られた有刺鉄線。
有刺鉄線の鋭くとがった刃が選手の肉を裂き、電流がバチっといった瞬間にバン!!と爆発が起こる!
ほんとにすごい試合でした!
以前、術→芸→道という順に究められるという話を記事にしました。
このつながりで語ると、大仁田厚はプロレスという術を必死に極めようとしてテリー・ファンクに師事します。
テリー・ファンクは当時、いわゆるプロレスの中で「過激さ」を表現するプロレスラーでした。
アブドーラ・ザ・ブッチャーなどに凶器攻撃を加えられ流血して観客をドン引きさせていました。
そんなテリーの試合を観ていた弟子である大仁田は流血などの「過激さ」は良くも悪くも人の気持ちを動かすのだということだと感じていたのでしょう。
もともとは「サンダーファイヤー」というキャッチフレーズで全日本プロレスのリングに上がっていました。
しかもベビーフェイス(善玉レスラー)でした。しかしあまりぱっとしない選手だったんです。
そんな大仁田厚が人々から「邪道」と言われ、自分でも「邪道」だと宣言し、貫きます。
プロレスの技や盛り上げるための技術などいわゆる王道のものとは一線を画す、デスマッチ形式を貫き通した結果、極められて「邪道プロレス」という「道」を見出していく訳です。
これはビジネス的には他にはできない大仁田厚ならではの唯一のことになり、「差別化」につながるわけです。
当時は、格闘技ブームが盛り上がり、「プロレスは偽物」とか「実戦じゃ使えない」というイメージが日本全土に広がりつつありました。
実際、新日本プロレスは格闘技選手との試合も行うようになります。その中で格闘技でも戦えるレスリングを目指した団体が生まれていきます。
リングス、UWFインターナショナル、パンクラスなどなど。
全日本プロレスはあくまでも王道プロレスを貫きます。
その中で大仁田厚は独自のプロレススタイル、「ストリートファイト」を取り入れたデスマッチ形式のプロレスを立ち上げていきました。
大仁田厚が試合後などに血みどろになりながら行うマイクパフォーマンスがあります。
決して筋の通った話をしているわけではないのですが、涙ながらに熱く訴えかけられるトークになにやら惹きつけられてしまいます。
そんなトークはいつしか「大仁田劇場」と呼ばれるようになります。