不思議なホラー映画です。
闇による怖さはほとんどありません。夏至により白夜となった村で起こる恐怖を描きます。
明るく全体的に白いイメージなのですが、気持ち悪さが立つ怖さがじわりじわりと迫ります。
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※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
2019年公開、アリ・アスター監督のホラー作品。
「ミッドサマー」は「夏至」のこと。
アメリカの大学生たちが白夜のスウェーデンの村の夏至祭に招待され、そこでのおぞましい体験が描かれる。
いわゆる胸糞映画としてよく紹介されている。
家族を不慮の事故で失ったダニー(フローレンス・ビュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人と5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭“を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい10人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気がただ酔い始め、ダニーの心は掻き乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……。それは想像を絶する悪夢の始まりだった。
Filmarksより引用
この映画は異文化とのコミュニケーションの難しさとか言うレベルのものではなく、最初から不安な雰囲気がずっとつきまといます。
何か、言葉は分かるが全く話が通じないような不快感。
精神的に気持ち悪さが立つ映画。
そして狙ってそう言う映像に作り上げているので、素直に気持ち悪がってあげましょう。
でも、ホラー映画に描かれるアメリカの学生って基本的にバカが多いですよね。
老人2人が崖の上から飛び降りて死ぬシーンを目の当たりにして、普通は異文化だからって納得しちゃダメでしょ。
いくらなんでもそこはウケ入れられないよね。マジでバカだよねー。
それもレポートのためだからとか、理由が希薄すぎ(笑)
そうこうしているうちにひとり、またひとりと学生たちが姿を消していく。
それも気にせずに祭りに参加し続けるってもはや考えなしにも程があるでしょ。
この映画はそういった違和感と不安な雰囲気と何を考えているのかわからない村人たちの不気味さがものすごく気持ち悪い。
というかそのように作ってるのがすごい。
SEXシーンも正直全くエロチックな感じがない。と言うかものすごい気持ち悪さが立つ。
ほんとにこの映画のすごいところはワンシーン毎に区切って見てみても、一言「気持ち悪い」に集約される点だ。
そして気持ち悪いは悪いことじゃない。映画という非日常で気持ち悪さを経験しても現実に戻ってきたら気持ち悪さから解放される。気持ち悪くないことが喜ばしく感じられる。
主人公のダニは、自分の妹の死や閉塞した周囲の状況に苦しんでいます。
なんとかそこから抜け出したいと常々、思っているのに状況はまったく変わらないでいます。
そこに夏至祭りの話があり、少しでも今と違った風景や状況があるのならと旅に同行します。
しかし、どんどんドツボにハマっていきます。
解放どころか追い詰められていきます。
しかしある時に気付いてしまいます。
道徳的な観念や周囲のすべてを脱ぎ去ることで、自分自身からすら解放されるということに。
笑顔になる前に涙を流しますが、これは今までの自分自身すべてを涙で洗い流してしまったことを描いているのだと思います。
ラストの彼女の笑顔はやっと解放されたという安堵の笑顔なのでしょう。
「ヘレディタリー継承」が黒ならば「ミッドサマー」は白など、割と同じ作りなのですが、対になるような作りになっています。
見た目の違いとして、「ミッドサマー」は白いのは何と言っても白夜の村が舞台だからです。
大して「へレディタリー継承」は夜の闇が基本の映像に仕上がっています。
監督のアリ・アスターはホラー畑の人と言って良さそうだ。
ホラー映画を見まくってた時期がありそれを映画作りに生かしているそう。
※気持ち悪く作ってあるのだからしっかり気持ち悪がってあげるのがこの映画を見る上での最高の楽しみ方だろう。
※楽しまないと損だ。
アリ・アスター監督のお気に入りの作品があります。
それが1973年公開の「ウィッカーマン」です。
見てみると分かるのですが、雰囲気や話の進め方、ラストに至るまで「ミッドサマー」はこの映画をなぞっているのが分かります。
周囲に町や村などがない、孤島という閉塞された空間や、見知らぬ宗教の自分たちには信じられない風習に対する嫌悪感。
50年も前の作品ながら、その雰囲気ゆえに古さを感じない。
アリ・アスター監督は「ウィッカーマン」のような作品を撮りたくて「へレディタリー-継承-」と「ミッドサマー」を撮ったのでしょう。
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