見事な肉体同士がぶつかり合い汗がしぶきとなる!叫びをあげ、力を振り絞り、何度倒れても、また立ち上がる。
手に汗握る戦いに心は燃えたぎります!
そう、あの「ロッキー4炎の友情」の再編集版が2022年8月に公開されました。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
1976年公開のジョン・G・アヴィルドセン監督作品。
脚本・主演をシルヴェスター・スタローンが務める。
大ヒットして大人気シリーズ化され、以降7作品が製作・公開されています。
2022年公開「ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV」はスタローンがコロナ禍の中、時間が出来たので4作目の「ロッキー4炎の友情」を再編集。
42分にも及ぶ未公開シーンを追加し、さらに4K デジタルリマスター×ワイドスクリーン×5.1chサラウンドで蘇る!
アポロの息子が主人公でロッキーが教える「クリード」シリーズと今作をカウントに入れると10作もの大作シリーズです。
スタローンもアポロ役のカール・ウェザースにドラゴ役ドルフ・ラングレンもとにかく引き締まった筋肉が美しいです!
名もなき三流ボクサー・ロッキーに急遽舞い込んだチャンピオン・アポロへの挑戦権。
これこそ人生の転機
周囲の人々の支えをバネに経験したことのない過酷なトレーニングに打ち勝ちリングへ。
果たしてロッキーは?
そして、今作「ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV」
王者アポロ・クリードとの戦いを経て、チャンピオンとなったロッキー・バルボアの前にソ連から“殺人マシーン”イワン・ドラゴが現れる。ドラゴとの激戦によって、ライバルであり親友のアポロを失ったロッキーは、対ドラゴ戦のため、ソ連へ乗り込むが……。
filmarks.comフィルマークスより引用
30歳を迎えたが、まだまだ全くの無名俳優だったスタローン。
原因のひとつが出産時の事故で顔の半分がマヒして動かせないという、障害を持ってしまったために活舌も悪く、表情も出せないというハンデのせいもありました。
妻と息子がいるにも関わらず、全く稼げないでいたところでの起用でした。
スタローンはどん底状態にありました。しかし周囲は建国200年記念という事でだんだんに盛り上がっていきます。
周囲と自分とのギャップがスタローンに重くのしかかります。
ある時、「レイジング・ブル」などを手掛けたプロデューサーのウィンクラーに呼び出されて、「15分のうちに自分を売り込め」と即席オーディションを受けることになります。
実はスタローンは脚本が書ける人でした。自分の書いた脚本を読んでもらったが、権利をすでに売却済みのものでした。ウィンクラーが「他にはないのか?」と尋ねました。
スタローンは「あるけど数日後に見せる」と言いました。実はその時は全くアイディアがなかったのですが、「ない」と答えたらそれで終わってしまいます。
だから「ある」と答えたのでした。
たった数日で脚本を仕上げます。アイディアは1975年3月24日におこなわれた、モハメド・アリ対チャック・ウェプナーのボクシングの試合でした。
アリは誰もが知るチャンピオンで、この時はケガからの復帰戦でした。そのため対戦相手はいわゆる噛ませ犬的な無名の選手が選ばれます。
それがウェプナーでした。しかし彼は元囚人で36歳と高齢にもかかわらず善戦し15ラウンド戦い抜きました。
しかもその間、アリから1ダウン奪っています。
当然世間はこの話題に沸きました。
スタローンはこの試合をモチーフに急いで脚本を書き上げました。
これが「ロッキー」が生まれた瞬間です。
映画会社は主役を売れている俳優のロバート・レッドフォードなどに依頼しようと考えていましたが、スタローンは自分を主役にしないなら脚本は渡さないとして、主役の座を手に入れます。
映画会社からは非常に低予算ではあるものの100万ドルをだしてもらいなんとかクランクインにこぎつけました。
1975年3月に脚本が仕上がり、それから撮影に入ります。
急ピッチで推し進めて1976年11月にアメリカで公開となります。
たった1年半で公開にこぎつけています。
建国200年の記念式典が行われます。これはフィラデルフィアで建国宣言したからです。
しかし1975年当時不況でけっこう悲惨な状態でした。
劇中でも1975年の建国200年祭の記念に行われるエキシビジョンマッチとなっています。
ロッキーが挑む相手のアポロ・クリードはモハメド・アリがモデルで同じように噛ませ犬としてロッキーを指名して試合をしようとしています。
冒頭のシーンで壁画に描かれたキリストの肖像画の下に書かれている大きな文字は「Resurrection(復活)」です。
大不況の荒廃した世の中からの復活とキリストの復活をかけて「この作品は復活の物語である」と冒頭で宣言しているわけです。
ベトナム戦争敗戦によりアメリカ全体が大不況で落ち込んでいた時に「復活」の映画をぶつけたわけです。
アメリカの敗北、世の中の敗北、スタローンの敗北(すべての労働者たちの敗北の象徴)からの復活劇として「ロッキー」は語られる物語です。
そうアメリカ全土は敗北からの復活を渇望していたのです。スタローン自身も望んでいたわけです。
これほどタイミングよくぴったりな作品を世に提供できる奇跡的なチャンスはそうはないです。
ウケない訳がない。
「ロッキー」はアカデミー賞の作品賞・監督賞・編集賞3部門受賞、スタローンは脚本賞・主演男優賞2部門にノミネート、など他多数ノミネートされます。
「ロッキー」撮影時、スタローンは暮らしもままならない役者でしたが、たった2年でアメリカ中に知れ渡る俳優へと昇りつめます。
スタローン自身も主人公ロッキーのようにアメリカンドリームを体現しました。
建国200年の記念試合としてアポロはロッキーを指名することをはじめ、いかにアメリカを愛しているのかを表すために、細かい演出で常に「アメリカ」を意識させるようにしています。
舞台となるフィラデルフィアはアメリカ独立宣言が行われた街であり、「友愛」や「友情」をモットーに周囲の人々を助けることを至上としています。
建国記念日は独立宣言を祝う日です。
試合が始まった時の「自由の鐘」の形をしているゴングを鳴らしています。
またラウンドガールが「自由の女神」だったり。
とにかく「アメリカ」にたいする愛情があふれんばかりです。
この頃の観客の大半である労働者、それから権力者が、この「アメリカを愛してる」というサインを否定できるはずがないわけです。
ヒットするべくヒットした作品と言えます。
「ロッキー2」「ロッキー3」はもちろん見ることができるならば見るとよいと思います。
この2作品を見ることでロッキーとアポロの熱い友情が育まれるのが分かります。
ただし「アポロとの友情がある」とだけ理解していれば、4作目「ロッキー4炎の友情」でロッキーがドラゴに挑むことを決意する意味が理解できます。
なので最低限で予習するならば1作目と4作目を鑑賞しておけば、バッチリです。
最悪、4作目が見られなくとも1作目は必須だと思います。
ロッキー:1作目ではうだつの上がらないボクサーでした。
チャンピオンのアポロに挑戦し、善戦したことでボクサーとして認められ、2作目、3作目と激戦を経験し、チャンピオンとして国の英雄的な存在となっていきます。
アポロは1作目でロッキーと戦って、からくも勝利するが、2作目で再戦し激闘の末、チャンピオンをロッキーに奪われます。
3作目ラストではロッキーの実力と思いを認めトレーナーとしてロッキーを鍛えなおします。
深い友情(あまりにも恋人に近い程の情熱です。)が芽生えます。4作目でドラゴとの試合で強打を浴び亡くなります。
ドラゴ:トレーニングメニュー、食事、などを完全管理することで戦闘マシーンのようなボクサーになります。彼にも退けない事情というものがあり、命がけでリングに上がり、全力で勝利をつかみに行きます。
まさに獅子はウサギを狩るのにも全力を尽くすというやつです。手抜きも情けも容赦も一切なしです!
特に4作目、再編集版もこのトレーニングシーンがほかのシリーズに比べて非常にワイルドで見どころのひとつとなっています。
最新のトレーニング機器や専属の医師・トレーナーらによって完全管理でトレーニングを行うドラゴに対して、自然の中でひとり孤独に過酷なトレーニングを架すロッキーとの対比が素晴らしいです。
またヒゲがぼうぼうになったロッキーがワイルドでかっこいい!
アポロの入場シーンでの曲、ジェームズ・ブラウン「Living In America」。
ジェームズ・ブラウン御大がご登場で大盛況!!若い!!いやとにかくド派手!!
「ロッキー4炎の友情」で流れる曲、サバイバーの「バーニングハート」です。
かっこいいです。
冬の山小屋での孤独な特訓の時に流れるのが、ジョン・カフェルティの「Heart’s On Fire」。
これを聞くと画面のロッキーとドラゴにシンクロして体を動かしたくてウズウズしてきます
ロッキーシリーズは名曲ぞろいです。
ちなみにシリーズ通しての一番のお気に入り曲はこれ。サバイバーの「Eye of The Tiger」
もう、これ聞くと燃えます!!!
「ロッキー4炎の友情」はスタローン自身がトップアスリートでアメリカの英雄に祭り上げた節があり、コメディ要素も点在していました。
その最たるシーンとして、ロッキーとエイドリアンが子供と一緒に住む豪邸にはなんと「お手伝いロボット」がいるんです!!
今回の再編集版では、熱い男たちのドラマに焦点を当てるためにこのロボットが登場するシーンをはじめコメディ要素のあるシーンはカットされてコメディ控えめになっています。
アポロの友情を胸に過酷なトレーニングを行い、身体を万全な状態に仕上げてリングに臨むロッキー。
個人的な思いを抑え込まれて、国のために勝利をつかまねばならないドラゴ。
ふたりの熾烈な戦いはまさに拳での語り合いです。
今回の「ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV」ではドラゴの思いや人間性があらわになります。
彼もまた1作目のロッキーと同じでチャンスを絶対につかまなければならない名もなき男だったのが分かります。
1対1の男たちの意地のぶつかり合いです。
「ロッキー4炎の友情」ではアメリカ対ソ連の代理戦争として描いた部分が強く出ていました。
この記事の冒頭部にアメリカ国旗デザインのグローブとソ連国旗デザインのグローブがぶつかり合って爆発している画像を添付してあります。
この映像が「ロッキー4炎の友情」の冒頭部には入れられていました。
しかし「ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV」ではカットされています。
あくまでも人間ドラマとして描きたかったという事で、代理戦争になる要素を減らしています。
ここが再編集版の一番の見どころでしょう。
互いにボロボロになるまで殴り合う、一発一発のパンチに観ているこちらも拳に力が入ってしまいます。
ソビエト連邦のゴルバチョフ書記長のそっくりさんが登場します。頭のあざがないです。
実は彼は同じくゴルバチョフ書記長のそっくりさんとして「裸の銃を持つ男」にも登場しています。
ちなみに下の画像はゴルバチョフ書記長本人です。
ロッキーは劇中、1作目から続けてカメを飼っています。
これは「カメはロッキー自身の象徴なんだ。甲羅はロッキーの強い肉体やボクサーとしての強さを象徴しているが、その中身はすごく弱弱しくて子供っぽいロッキーが隠れている」とスタローンが語っていたそうです。
そして、同一のカメがその後の「ロッキー」シリーズにも出演し続けています。
ちなみに「ロッキー」シリーズ通してのテーマ曲である「ロッキーのテーマ」は1976年~1986年にテレビ朝日系で放映されていた川口浩探検隊シリーズなどでお馴染みの「水曜スペシャル」のテーマ曲としても使用されていました。
1作目イタリア人街の市場をトレーニングで走るロッキーのシーン
このシーンの市場の人々は実はエキストラではなく、本当に市場で働く一般の人々です。
しかも当時、スタローンは無名で誰も知らないし、映画の撮影だとも知らなかったそうです。
ただ”頑張って走っている若者が取材を受けている”くらいのつもりだったみたいで「がんばれよ!」とオレンジを投げ渡してくれたり、声をかけてくれているのはリアルな人々の反応です。
驚くことにまったく演出されていないシーンなんです。
低予算ならではの小話は他にもあります。
ステディカムは移動しながらでもぶれずに対象を撮影できるカメラです。
最近だとスマホにジンバルとかスタビライザーって使いますよね?あれです。
この年にステディカムが開発され、3作品がこのカメラを使ったシーンを撮影しています。
3作品のうちの1作品が「ロッキー」です。
かなりの低予算にもかかわらず、レンタルで一時的に借り受けることが出来て撮影に使いました。
それがイタリア人街の市場をランニングするシーンです。
この撮影があったためにステディカムは一躍注目を集め、一般化しました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
この記事を気に入って頂けましたら幸いです。
また是非、SNSなどでシェアしていただければと思います。