ファンタジーと言うとどうしても西洋風のファンタジー作品を思い浮かべますが、中華ファンタジーも素晴らしいです。
それを世に知らしめた作品がこの「蜀山奇伝 天空の剣」です。
1983年公開ツイ・ハーク監督の香港映画。日本での公開は1987年4月25日から。同時上映は「スケバン刑事」。
主題歌はユン・ピョウが担当。
今回もまた、ネタバレはありません。この記事を読んで興味を持っていただけたら幸いです。
あちこちで戦いの絶えない戦乱の世の中。
戦乱に乱れた気に乗じて魔神は人間界を支配しようと魔界の門を開こうとしていた。
正義の仙人、僧、道人たちは魔道軍団と戦い続けるが、策略にはまり動きを封じられてしまう。
一兵卒であった明奇は義の心に目覚め、魔神から世を救うために一真とともに伝説の聖剣を求めて旅に出るが。
武侠小説「蜀山劍俠傳」を改編してワイヤーアクションを駆使してダイナミックなアクションを使い、SFXを多用して霊力や妖力、仏や仙人、魔物などを描き出したスペクタクルファンタジー作品。
その後の映画「ゴーストハンターズ」のモチーフになったと言われています。
また「スターウォーズ」シリーズのロバート・ブララックがSFXを担当したのでかっこよく仕上がっています。
カンフーアクションのサッカー映画「チャンピオン鷹」の人気俳優ユン・ピョウとジャッキー・チェン、ユン・ピョウの兄貴分にして「燃えよデブゴン」シリーズで大人気のサモ・ハン・キンポー。
また日本で大ヒットの名曲「魅せられて」の歌い手、ジュディ・オングなど豪華な俳優陣です。
とにかく特徴的なのはアクションの見せ方がこの作品が革命的であったことです。
今作はカンフーアクションに京劇由来の見栄の切り方や、動きによって衣装がはためく様を美しく見せるなどが取り入れられて、単調なアクションからメリハリを付けたダイナミックなアクションへと変革が起きています。
今となっては当たり前となっているアクションの見せ方も今作からの影響が大きいです。
中国には神仙思想や五行思想に基づいた、独特のファンタジックな物語がたくさんあります。
日本で有名どころと言えば「西遊記」や「封神演義」はそういった物語のひとつです。
仙人は決して人の味方という訳ではありません。
なぜかと言えば、永遠の命や神仙術による世界の真実を解き明かす事にのみ興味があり、人の世のしがらみを捨てた者が仙人だからです。
だからこそむしろ、悪鬼や妖怪になり果てる者もいれます。
しかしその中で道士と呼ばれる者たちは基本的に世をはかなみつつも人の味方をします。
こういった物語の設定を利用して不思議で壮大な世界観を描き出します。
見て頂くと分かるのですが、神仙術や妖力を使うキャラクターたちは基本的にみんなゆったりとした、風になびくような衣装を着ています。
これが美しくたなびくのでまるで踊っているかのように戦い合います。
美しさが際立つ戦闘シーンは衣装のおかげと、それを考慮した画作りによるものです。
元来、香港映画や京劇の特徴は物語が形式化されていて、基本的に敵討ちのストーリーになっています。
家族や大切な人を惨殺されてしまった主人公が、修行したり冒険したりして強くなり敵討ちを成就させるというのが基本形です。
ブルース・リーはこの形式を打ち破り、スパイものや文化大革命などの歴史や社会を克明に描いたりしました。
ジャッキー・チェンは元の形式的なストーリーをコメディ要素を加えて、分かりやすく、親しみやすくしました。
この大きなふたつの流れを汲んで、今作は撮影されています。
妖魔と仙人たちとの戦いをコメディ要素を以って分かりやすく描き出すことに成功しています。
「ゴーストハンターズ」をはじめ、「霊幻道士」「幽玄道士」などのキョンシー映画、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズ、「グリーン・ディスティニー」、リメイク作品である「天上の剣 The Legend of ZU」、「HERO 英雄」、「LOVERS 十面埋伏」などファンタジー、時代劇問わず、影響されているであろう作品は枚挙に暇がないほどです。
挙げた作品のすべてにワイヤーアクションが使用されています。
香港アクションといえば、ブルース・リーやジャッキーチェン、ジェット・リーですが、彼らではきっと描き切れなかったファンタジー作品がこの「蜀山奇傳・天空の剣」なのではないでしょうか。
「西遊記」や「水滸伝」にも通じる世界観で懐かしいような感覚があるのもまたいいなと思います。
ユン・ピョウとサモ・ハン・キンポ―が出演しています。
ブルース・リーとジャッキー・チェンの大きな流れを汲みつつ、別の流れを作り出し改めて世界的に認められるようになっていきます。
ブルース・リーやジャッキー・チェンの作品が大好きな方でも意外とこの作品をご覧になったことがないという方は多いのではないのでしょうか。
今回はネタバレなしで概要のみ語らせていただいています。
この作品に興味を持っていただけたなら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
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