2022年10月28日(金)よりAmazonプライムビデオにて全10話が一挙配信開始された「仮面ライダーBLACK SUN」。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
作品概要
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1987年10月4日から1988年10月9日まで、TBS系列で毎週日曜に放映されていた「仮面ライダーBLACK」のリブート作品。
主人公南光太郎役に西島秀俊、ライバルの秋月信彦役に中村倫也、ヒロインの和泉葵役に平澤宏々路(ひらさわこころ)。
2022年10月28(金)よりAmazonプライムビデオにて全10話一挙配信開始となっています。
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ざっくりあらすじ
時は2022年。国が人間と怪人の共存を掲げてから半世紀を経た、混沌の時代。差別の撤廃を訴える若き人権活動家・和泉葵は一人の男と出会う。南光太郎──彼こそは次期創世王の候補、「ブラックサン」と呼ばれる存在であった。50年の歴史に隠された創世王と怪人の真実。そして、幽閉されしもう一人の創世王候補──シャドームーン=秋月信彦。彼らの出会いと再会は、やがて大きなうねりとなって人々を飲み込んでいく。(C) 石森プロ・東映 (C) 「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT
Amazonプライムビデオより引用
「仮面ライダーBLACK」へのオマージュ
主人公たちキャスト
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南光太郎(ブラックサン)、秋月信彦(シャドームーン)ともに同名であり親友同士という設定も変わらずに引き継がれています。
1987年版は「仮面ライダー」作品で初めて「ライダーvsライダー」を描いた作品でもあります。
令和版でも、もちろんふたりの熱い激闘を見ることが出来ます。
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外骨格デザイン
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仮面ライダーのデザインは「仮面ライダーBLACK」以降では大きく変化したと言われています。
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それまではいわゆる「スーツ」を着ているデザインになっているのですが、BLACKは外骨格デザインと呼ばれる、昆虫のような甲羅と筋肉を模したデザインになっています。
もちろん今回の「BLACK SUN」も外骨格デザインを踏襲しています。
かなりゴツゴツしたイメージになっていますが。
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ベルトについて
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「BLACK」において、そもそも「ベルト」は「変身ベルト」じゃないんです。設定上「ベルト状の形をした体組織」なんですね。
メーターがついていたり、メカメカしかったりしますが、生体なんです。
中心の赤い部分は「エナジーリアクター」と呼ばれるパワーの中心でここに集中されたパワーを身体の各部位に送出する役割を持っています。
令和版ではその部分にはあまり詳細に触れられていませんが、設定が引き継がれているのは確かです。
変身ポーズ
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1987年版の変身ポーズをそのまま踏襲されているのが非常にうれしかったですね~。
シャドームーンはブラックサンとは左右対称のポーズになります。
ちなみに変身ポーズは「バイタルチャージ」と呼ばれるものでポーズをとることでエナジーリアクター集中凝縮したエネルギーを身体中にみなぎらせる効果があります。
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光太郎のもとに駆け付けた葵がカマキリ怪人に変身する時に、光太郎と同じ変身ポーズをとります。
その時にちゃんと腰にエナジーリアクターが現れます。
光太郎への思いと怪人のパワーの使い方の基本が一緒なのがここで分かります。
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さらに手でリアクターに触れる動作があります。これは平成以降の新しい仮面ライダーたちの特徴のひとつです。
仮面ライダーとして戦う事の決意としての変身ポーズ、そしてあくまでも令和の新しい仮面ライダーを表しています。
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ただ、彼女の変身シーンには賛否両論あるようです。
「仮面ライダー」の意志を継ぐ者として変身ポーズをとったということで歓迎している反応もあれば、その割に姿かたちが怪人のままではないかと批判する人もいます。
電八的には彼女はもともと人間と怪人の橋渡しをする役目の立場なので、ライダーであり、且つ怪人であるということに矛盾はないのだと考えています。
バトルホッパーとロードセクター
ブラックの愛車と言えば、バトルホッパーとロードセクターの2台です。
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時代設定を考慮してのハードなデザインが令和版ではかっこいいです。
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バトルホッパーはもちろんBLACKが乗車します。
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ロードセクターはシャドームーンが乗車しました。シャドームーンを意識したカラーリングがまた渋いです。
コウモリ怪人やクジラ怪人などの扱い
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1987年版ではBLACKに協力する怪人や複数回登場する怪人がいます。
それが、クジラ怪人やコウモリ怪人たちです。
令和版もしっかり踏襲してクジラ怪人、コウモリ怪人が葵とBLACK SUNに協力するようになっていきます。
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単なる勧善懲悪ではない設定
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「仮面ライダーBLACK」に登場するゴルゴムという結社は完全なる悪という訳ではないのが当時非常に衝撃的でした。
彼らは人間が破壊する自然を守る立場の存在でした。ただ、そのために人間を排除してもいいというところにBLACKは同意できずに人間を守るために戦うという構図。だからBLACKは苦しい立場で戦い続けていました。
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令和版もそこは踏襲されています。
怪人を化け物と見下す人間と、化け物と蔑まされて生きてきた怪人の対立構造がある上でゴルゴム党は堂波の私腹を肥やすために利用されます。
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人間を怪人に改造する時にビルゲニアは逆に人間を見下します。
しかも元々怪人は堂波の祖父が非人間的な人体実験・人体改造をして生み出されたものだという事が判明します。
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果たして、人間を恨み殺したりする怪人が悪なのか?怪人を生み出しておいて私腹を肥やすために蔑む人間が悪なのか?
それとも、葵が言った通り、「無関心」そのものが悪なのか?
考えさせる構造になっています。
葵は自分たちの誇りと尊厳を守るために差別と戦い続けることを決心します。
ヒロインは14歳
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平澤宏々路が演じる和泉葵は14歳の女の子です。
ただ、怪人との共存を望むことを国連で公開発表しているという立場です。(現在のグレタさんっぽいのかな?)
なぜこんな特殊な設定になっているのか?
恐らくなのですが、怪人に対する差別や怪人の成り立ちなどがこの物語のキーになってくる部分であり、これを客観的で純粋に見ることが出来る立場のキャラクターが必要だったのでしょう。
見ている我々も葵の目を通して、「BLACK SUN」の世界を客観的に見ることが出来る構造になっています。
そして年齢についても14歳であれば、人の気持ちの機微にも対応できるくらいの大人であると同時に純粋さが残っている年齢です。
葵に関しては変に恋愛要素を絡めてしまうと物語の重厚さが乏しくなってしまいます。
南光太郎との恋愛要素は差し控えておきたいというのも大きかったのだと思います。
そのための14歳という年齢設定だったのでしょう。
50年前と現在を行ったり来たりする物語
1972年と2022年の50年の時を行ったり来たりしてキングストーンの行方を追うような展開になっています。
50年前、学生運動のように怪人への差別を撤廃させる運動に身を投じていた、光太郎、信彦たちとその仲間の間に起こったことも重要な要素なんですね。
50年で年を取ったのはヘブンを口にしていない光太郎と三神官のひとりダロムだけです。
学生運動とのイメージの融合
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時代設定が50年前と現在を行ったり来たりするようになっていてとても新鮮に感じました。
そして怪人を排斥する運動や怪人への差別撤廃の運動などが完全に学生運動のイメージそのままに行われています。
実際にヘルメットやマスクをして武術訓練や火炎瓶や爆弾製作などを行っていた学生たちがいました。
1970年に連合赤軍が起こしたよど号ハイジャック事件や、その後の山岳ベース事件、あさま山荘事件などのイメージをそのまま使っていました。
連合赤軍は警察から逃れるために山にこもり、必要ならば山中を移動して過ごしていました。
またカップ麺を食べるところを少し印象的に見せたのには理由があります。
あさま山荘事件の時に極寒の中、警察官や機動隊員に温かいものをということで配給された日清のカップヌードルを食べるシーンが当時非常に印象的な映像で、その後CMに起用されたほどでした。
なのでカップ麺を食べる絵柄は学生運動や連合赤軍などをモチーフにした場合にいわゆる「外せない画」なんですね。
ふたつの禁忌
この物語では恐ろしいふたつの禁忌を犯している姿が描かれています。
ヒートヘブン
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怪人用の食料として登場する、何やら肉とゼリーをまぜこぜにしたような食べ物です。
怪人はこれを食べることにより、パワーを得ることが出来ます。
ケガや病気を即座に治し、死亡直後なら蘇らせることも出来ます。
常時食べていれば年を取ることもありません。
50年間ヘブンを与えられ幽閉されていた秋月信彦(シャドームーン)が年を取っていないのはそのためです。
逆に南光太郎(ブラックサン)は50年間ヘブンを口にすることがなかったので年を取っています。
原材料は創世王が身体から分泌するエキスと人間です。
ヘブンを食べることは人間を食べることと同義なんですね。
人間の怪人化
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改造手術を行う事で人間を怪人にすることが出来ます。
人間を材料に生体兵器を作る目的で怪人は生み出されました。
被検体にされた人間の人権を奪う非人道的な行為。
しかも創世王は意志を奪われ、ヘブンのエキスを搾り取られるだけの存在にされてしまい、さらにヘブンは人間を材料にしていて、怪人たちはそれを食べるわけです。
「ゴジラ」や「ウルトラマン」より「仮面ライダー」が人気だった理由
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1971年に「仮面ライダー」が放送されるまでは「ゴジラ」や「ウルトラマン」のような巨大怪獣や巨大ヒーローモノが全盛期でした。
TVが普及して子供たちがヒーロー番組を楽しむようになると、ヒーローや怪獣のマネをして遊ぶようになります。
しかし巨大な怪獣やウルトラマンなどは動きのノソっとしている上にバリエーションが乏しく、いまひとつ楽しむのが難しかったわけです。
そこに「仮面ライダー」という等身大のヒーローがお茶の間に登場するわけです。
子供たちはスピードとキレのある動きに魅了され、さらにみんなでマネをして遊ぶのが簡単で交代交代で遊べるようになったのです。
必然的に「仮面ライダー」は子供たちに受け入れられて、大人気になっていきました。
電八的な感想
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非常にシビアでヘビーな物語ですべて見切るのにかなりの体力がいりました。
それだけ、心にドスンとくるパワーを持った作品だっという事が言えると思います。
「仮面ライダー」は基本的に1話完結の作品ですが、この「仮面ライダーBLACK SUN」は全10話をフルに使った一本の映画作品と言えると思います。
生々しかったり、残酷だったりと描写もショッキングなものが多いのも敢えてそう見せることで、人の思いの儚さや強さをしっかりと伝える効果があります。
特に葵が立ち向かう気持ちを奮い立たせるところなどは勇気がもらえる気がしました。
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最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
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