SF作品のひとつのジャンルとして「ファースト・コンタクト(初の接触)モノ」と呼ばれるジャンルがあります。
今回紹介する映画「メッセージ」はそんなファースト・コンタクトモノで傑作と呼ばれている作品です。
なにがそんなにすごいのか?ちょっと解説してみようと思います。
作品概要
◆メッセージ/ソニーピクチャーズ公式サイト
2016年公開のドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品。
テッド・チャン著作のSF短編小説「あなたの人生の物語蟻」をもとに脚本・映像化した作品。
主演は「マン・オブ・スティール」でロイス・レイン役を務めたエイミー・アダムス。また「アベンジャーズ」のホークアイ役のジェレミー・レナ―も出演。
ざっくりあらすじ
ある日、突如として世界各地に音もなく降り立った巨大な宇宙船。
言語学者のルイーズと物理学者のイアンのふたりは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる任務に就くことに。
“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのか、また彼らの未来には何が起きるのか・・・。
徹底的な科学考証
いわゆるハードSFとして徹底的にこだわって作り込まれています。
宇宙船や宇宙人のデザインや特徴などにも科学的な理屈がしっかりと付けられています。
まずデザインや設定ありきではありますが、そこに数学的な意味であったり実際に科学者がどのように解釈していくのかなどを克明に描いています。
地球外生命体「ヘプタポッド」の設定
今作の宇宙人である、地球外生命体「ヘプタポッド」について。
この宇宙人はデザイン的にはタコに近い形状で宙に浮いています。
7本の肢が生えていて、前後左右が決まっていない形状をしています。
つまり彼らには方向や順番という概念がないのです。したがって時間的な概念もなくて未来も過去も同時に見ています。
つまり過去はもちろんその後何がどうなるのか、彼らは全て知っている訳です。
彼らの表した文字が円形をしているのはそのためで、始まりも終わりもない訳です。
ただし向き(ベクトル)はあるのでそれで意味を表しているということです。
作中で、とある将校によって、爆弾が宇宙船内に仕掛けられて爆発。巻き込まれるルイーズとイアンを「ヘプタポッド」の1体が重力制御で救います。
しかしその「ヘプタポッド」は爆風に巻き込まれて死んでしまいます。
彼らはその事をあらかじめ知っています。
自分たちがいつ、どこで何をしてどうなるのか観る事ができるのです。死ぬことが分かっていてルイーズたちを救ってくれるのです。
そんな彼らは何のために飛来したのかというと3000年後に彼らは何らかの原因で絶滅の危機に瀕してしまいます。
それを防ぐためにはルイーズを通して地球人類に未来を見通す力をつけさせる必要があったからなんです。
ラストで宇宙船が空に飛び立っていくのではなくて、す~っと消えていきます。
これも彼らには順番、距離、時間などが関係ないので、移動するのではなく指定の座標に転移するだけだからそういう描写になるわけです。
文字の効能
ではどうやって、未来を見通す能力を人類に与えるのか?
それは彼らの文字を使います。
彼らの文字はそれ自体に意味がある表意文字であり、しかも前後左右上下の区別なく、始まりも終わりも時間も関係ない文字です。
つまり彼ら「ヘプタポッド」の文字を読むことは、過去も未来も同時に認識できるようになるという事です。
文字を読むと未来の記憶も見ることが出来るようになるわけです。
ルイーズがこれを解読して、本で出版します。それを呼んだ人々が「ヘプタポッド」の文字を読むことが出来るようになります。
つまり人々も未来の記憶を見ることが出来るようになるという事です。
ルイーズの娘の記憶
作中、ルイーズの娘の記憶の映像がちょくちょくフラッシュバックのように挟み込まれます。
実はこれは未来に起こる出来事で、ルイーズが「ヘプタポッド」の文字を解読して得た能力によって見通した未来の記憶なんです。
ルイーズはイアンと結婚し、娘が産まれます。
しかしイアンとは破局し、娘は幼くして病で死んでしまいます。
未来が見えるというのはいい事ばかりではないんですよね。
でもラストシーンでルイーズはイアンからの交際の申し込みを受け入れます。
受け入れなければ、娘は生まれてすら来ないのです。
例え幼くして死んでしまうにせよ、たっぷりと愛情をかけてあげる事は出来ます。
最後のルイーズの顔はイアンの申し込みにすべてを知っていても、未来(運命)を受け入れようという決意と喜びと悲しみとを含んだ複雑な胸中を目に宿した表情です。
電八的な評価
※まず完全に個人的な評価となります。違うご意見お持ちの方もいらっしゃるでしょうし、それを否定する意図はまったくありません。あくまでも電八個人の評価です。
自分としましてはSF作品としての評価は10点満点中9.5点です!
時間を扱ったり、ファーストコンタクトを扱う作品で有名なのが「2001年宇宙の旅」や
「インターステラー」などがあります。
参考までにこれらの作品の点数は「2001年宇宙の旅」が7.5点、「インターステラー」が8.9点です。
徹底的な科学考証のもと、似たようなテーマを扱った作品で差が付きました。
これは時間間隔の分かり易さと、敢えて宇宙を舞台にせずとも壮大なスケール感を肌感覚で感じさせてくれるというところに好感が持てたからです。
おまけ:ばかうけです!
本作のキービジュアルのポスターが公開された時に、宇宙船のデザインがスナック煎餅「ばかうけ」にあまりにも似ているとSNSなどで非常に話題となって、いろんな面白画像が作成されるなど大いに盛り上がりました。
ヴィルヌーヴ監督はこの事に対し、公開直前にYouTubeで日本向けのスペシャルメッセージをアップロードしました。「ご推察の通り、宇宙船のデザインは『ばかうけ』に影響を受けたものだ」と日本での盛り上がりにジョークを交えてコメントしました。
ばかうけを製造販売する栗山米菓では、本社敷地内の「ばかうけ稲荷」で本作が「ばかうけ」するように祈願しました。さらにその後ばかうけとのコラボポスターも公開されて、さらに盛り上がりました。
ちなみにただいまAmazonプライムビデオとU-NEXTにて見放題配信中です。
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