今回は「ベトナム戦争映画」3作品を紹介いたします。
この3つの作品は割と同時期に発表・公開され、以前はよく比較されていました。
知っていると少し見方が変わるかもしれないネタを含め紹介いたします。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
※注意:この記事には気分を害する恐れのある画像や映像が含まれます。ご注意ください。
作品概要
ハンバーガー・ヒル
1987年公開のジョン・アーヴィン監督作品。
有名な役者を使わずに、浮いたお金を爆薬に使用したと言われています。
大迫力の戦闘シーンは、地獄そのものです。
史実をもとにした戦争の残酷さと悲惨さ、激しさ、若者たちの苦しみ、虚しさなどをリアルに描き出している。
1969年、南ベトナムのアシャウ渓谷にある丘、ドン・アプ・ビア=通称“937高地”でアメリカ軍第101空挺師団と北ベトナム軍との間で繰り広げられた攻防戦「アパッチ・スノー作戦」を描いています。
プラトーン
1986年公開のオリバー・ストーン監督作品。
第59回アカデミー賞 作品賞など4部門、第44回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞受賞作品。
チャーリー・シーン、トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォーらが出演。
タイトルの「プラトーン」は30~60人程度の「小隊」を意味します。
フルメタル・ジャケット
1987年公開のスタンリー・キューブリック監督作品。
原題「Full Metal Jacket」の直訳は『完全被甲弾』となり、弾体の鉛を銅などで覆った弾丸のことです。
前後半の2部構成のストーリーとなっています。
ざっくりあらすじ
ハンバーガー・ヒル
ブラボー中隊の兵士が“ハンバーガー・ヒル”の戦いに挑む。そこは泥まみれの丘で、兵士を挽き肉のようにしてしまうことからそう名づけられた。14人の、戦争に疲れた兵士たちの戦場だ。彼らは国のため、仲間のため、自分の命のために戦う。戦争は地獄だが、この戦いはそれよりもひどい。それを当時のままに再現したのが、この映画だ。アメリカが関与した戦争の中で最も残酷な戦いの1つを、実際に近い形で容赦なく描写している。発砲をよける兵。敵陣に捕らえられる兵。戦って死んだ勇敢な若い仲間の傍らで戦いに向かう兵。自暴自棄やむなしさを感じる兵。ハンバーガー・ヒル…それは最悪の戦争であり、最高の兵士たちが戦った実話である。
Amazonプライムビデオより引用
プラトーン
1967年、大学を中退した正義感溢れる若者が、志願兵としてベトナム戦争に従軍する。配属されたのは最前線の小隊プラトーン。そこでは冷酷非情な隊長と、無益な殺人に反対する班長が対立していた。やがて彼は戦場で、想像を絶する人間の狂気を目の当たりにすることになる。
フルメタル・ジャケット
ジョーカー、アニマル・マザー、レナード、エイトボール、カウボーイ他、新兵たちは地獄の新兵訓練所ブートキャンプに投げ込まれ、残忍な教官ハートマンによってウジ虫以下の扱いを受けていくのだった。
Filmarksより引用
1980年後半という時代
1970年代までズルズルと泥沼化して続いていたベトナム戦争に負けてしまったというアメリカ人のやるせない暗い気持ちと大不況による不安で暗い時代が1980年前半まで続いていました。
そこで戦争反対を叫ぶ若者たちの運動が始まったりしていたのですが、彼らはマリファナやフリーセックスに溺れていました。
1980年代半ばになると経済的にだんだん上り調子になってきた時に、戦争でたくさんの人が苦しんだ、その事実を忘れてはならないという雰囲気が高まります。
「愛と平和」は大切だが、戦って散っていった若者たちがいたからこそ、「愛と平和」を叫ぶことが出来る世の中になった訳です。
戦争を忘れるのではなく語り継ごうという空気が生まれてきます。結果、ベトナム戦争映画がたくさん製作されるようになります。
80年代に入り映画製作数がぐっと増え、SFやホラーにコメディなど多様な作品が作られる中で、「ベトナム戦争」にテーマを絞った映画がたくさん作られるというブームのようなものが起きました。
その中で代表的なものが、今回紹介した3作品です。
どの作品も共通して、「戦争という狂気」と狂気すら味方にしないと生き残れない残酷で容赦ない恐ろしい地獄のような状態を描いています。
そんな中でも懸命に大切なもののために戦う姿が描かれています。
反戦をうたうなら、「戦争のリアルなむごたらしさを知らないといけない」というメッセージがそこにはあります。
アカデミー賞をめぐって
3作品の中ではアカデミー賞を受賞したのは「プラトーン」だけです。
「フルメタル・ジャケット」は脚色賞にノミネートとなっています。
しかしあまり知られていないのですが、「ハンバーガー・ヒル」は「プラトーン」とアカデミー賞受賞について最終選考まで争っていたんです。
最終的に僅差で「プラトーン」に軍配があがったのですが、どちらが受賞してもおかしくなかったのだそうです。
その後の扱いの違い
「プラトーン」はアカデミー賞受賞作として、日本でもTV放映などは局を問わずに何度も繰り返し行われています。
アカデミー賞受賞作というだけで、「観たい」という需要がいかに高いかがわかります。
かたや「ハンバーガー・ヒル」は今となっては「知る人ぞ知る作品」になってしまっています。Wikipediaでもアカデミー賞に絡めた情報は一切、書かれていないです。
「フルメタル・ジャケット」はマニアックな側面があるために一部の熱狂的なファンを獲得しています。
そのため今でも「戦争映画といえば」と問われると迷わずに「フルメタル・ジャケット」と答える人が必ずいます。
3作品の小ネタ
ハンバーガー・ヒルの小ネタ
ブラボー中隊の面々が攻略しようとしている丘の通称が「ハンバーガー・ヒル」です。
あまりに激しい戦闘で、やられた兵士たちの肉体は原形をとどめないほどになってしまう事から
「この高地はオレ達をミンチにしようとしている!」
ということで、丘をミンチ肉を使ったハンバーガーに見立てて名付けました。
そう考えると、非常に恐ろしいタイトルです。
プラトーンの小ネタ
監督を務めたオリバー・ストーンはベトナム帰還兵です。
アメリカ陸軍の偵察隊員として従軍中の実体験に基づいて描いています。
アメリカ軍による無抵抗のベトナム民間人に対する虐待・放火、虐殺や強姦、米兵たちの間で広がる麻薬汚染、仲間内での殺人、誤爆、同士討ち、敵兵に対する死体損壊など、現実のベトナム戦争で目にしたことを映像化しています。
フルメタル・ジャケットの小ネタ
日本語字幕を戸田奈津子が担当したのですが、キューブリック監督が過激さが足りない!ということで、急遽原田眞人を起用してやり直させたそうです。
その結果「まるでそびえたつクソだ!」などの奇抜な言い回しがかえって著名になり、さまざまなパロディが登場することになりました。
パロディと言えば、1988年8月に任天堂から発売になった「ファミコン・ウォーズ」のTVCMが本編前半の訓練シーンなどのパロディとなっています。
何気にかなり意識して製作されているのが分かります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
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