※この記事は2025年4月8日に加筆修正いたしました。
今回は伝説的スペースオペラがアニメ化!『SF新世紀レンズマン』の魅力を徹底解説していきたいと思います。
「スター・ウォーズ」に影響を与えたとされる、アメリカの古典SF小説『レンズマン・シリーズ』をご存じですか? その壮大な宇宙冒険譚を、日本のアニメーション技術で大胆に映像化したのが、1984年公開の映画『SF新世紀レンズマン』です。本作は、手塚治虫や宮崎駿にも影響を与えたスペースオペラの金字塔とも言われ、SFファンなら一度はチェックしておきたい名作です。本記事では、ストーリーの背景や見どころ、当時の時代背景などを詳しくご紹介します。
※注意:この記事にはネタバレが多分に含まれています。作品をご覧になっていない方にはオススメできません。
作品概要

『SF新世紀レンズマン』は、1984年に公開された日本のSFアニメ映画で、監督は広川和之氏と川尻善昭氏が務めています。原作は、E・E・スミスの名作スペースオペラ小説『レンズマン・シリーズ』。宇宙を舞台にした壮大な戦いと成長の物語が描かれており、SFファンには欠かせない作品のひとつです。
本作の主題歌は、人気ロックバンドTHE ALFEEによる「STAR SHIP -光を求めて-」。熱い楽曲が、作品の壮大な世界観をさらに盛り上げています。
総製作費は当時のアニメとしては異例の12億円。
CG(コンピューターグラフィックス)を本格導入した日本アニメ映画としては、『ゴルゴ13』に続く第2作目にあたり、CGと手描きアニメーションの融合に挑戦した意欲作です。
『SF新世紀レンズマン』は、日本の劇場版アニメとして初めてアメリカで公開された作品でもあり、国際的な評価も高いことで知られています。CG技術との融合はまだ発展途上ではありましたが、その挑戦は後のアニメ業界に大きな影響を与えました。
CGとセルアニメの融合は今でも難しいとされる分野ですが、本作はその礎を築いた記念碑的作品と言えるでしょう。
『レンズマン』とは?超能力と銀河パトロールが織りなすSFの金字塔を解説

『レンズマン』とは、超能力を操るエリート「レンズマン」たちが銀河の平和を守る人々の事です。彼らは「銀河パトロール」という組織に所属し、厳しい訓練の末に「レンズ」と呼ばれる特殊な装置を授けられます。このレンズは、身分証明と超能力強化を兼ねた特別なアイテムで、持ち主専用に設計されており、同じものは二つとして存在しません。
本作の主人公キム(キムボール・キニスン)は、偶然にも瀕死のレンズマンからレンズを託されるという異例の経緯でレンズマンとなり、成長の物語が描かれます。この“レンズの継承”は本来極めて稀な出来事であり、キムの運命の特別さを象徴しています。
なお、原作シリーズでは、レンズマンの階級は複数あり、最高位に位置するのが「グレーレンズマン」です。この階級に到達すると、銀河パトロールの中でも絶対的な権限を持ち、命令を受けることもなく、予算を無制限に使えるなど、まさに銀河を背負うスーパーヒーローとして活躍します。
アニメ版では原作の複雑な世界観をシンプルに再構築し、SF初心者でも楽しめるエンターテインメント作品となっています。
ご都合主義と残された謎

今作は完全独裁制のボスコーンと自由銀河同盟との戦争が舞台となっています。
キムが受け継いだレンズにはボスコーンのDNA情報や戦略情報などが含まれていて、これを同盟に届ければ戦況が一気に覆るというものでした。
「スターウォーズ」でデススターの設計図を同盟軍に届けて破壊するまでの物語とそっくりなのは、言いっこなしで(笑)
そこで謎なのがレンズはひとりひとりに合わせて調整されたものが与えられるので他人のモノを受け取ったり、破壊してしまった場合新たなレンズは手に入れる事が出来ないというのが原作の設定です。
しかも今作のキムはまったくなんの訓練も受けていないただの若者です。多少先輩レンズマンのウォーゼルに教えてもらったところで使いこなせるはずもないのですが・・・。
とまあ、それを言ってしまっては話が進まないのです。宿命的に選ばれて奇跡的に受け継がれた、天才的な才能の持ち主だったと納得しておきましょう。
そして、ボスコーンの首領を倒した後、首領の中身(?)が不気味に鳴動しながら宇宙空間を漂っていきました。これ、恐らく続編を意識していたんでしょうね。
まあ、人間の悪の部分は完全に滅ぼす事は不可能だという隠喩なのでしょう。
今作ではレンズやレンズマンについての詳しい描写やレンズを与えてくれる上位の存在アリシア人は出て来ません。
偶然まったく謎のレンズを受け継いでしまったキムが、仲間やレンズの力を借りつつ大冒険して、恋したり成長していく物語になってます。
CGについて
この頃はCGは大変でした。なにせワイヤーフレーム(線画)を作ってから、その上にひとつひとつテクスチャ(色や効果)を載せていって(レンダリング)、1枚の絵を創ったら、同じ要領で少し動いた絵を1から作っていくという気の遠くなる作業を行っていきます。出来上がった絵を1枚ずつ切り替えて映せば映像になります。
ビデオ映像は1秒間30コマなので、1秒間の映像を作るのに30枚の絵を作ります。
ボスコーンの司令戦艦は形状が複雑で(脳みそのようなデザイン)描くのに非常にマシンパワーが必要で、当時のスーパーコンピューターを使って描いたそうです。
それから世界初、手描きのキャラクターとCG画面を合成した映像を作り出したアニメでもあります。
川尻善昭トーン
今作では作画スタッフの取りまとめ役として、共同監督として携わっている川尻善昭氏。
この作品が監督初作品となります。
彼の演出の特徴して、画面をブルーやレッド、ピンク、グリーンなど、その時の印象で各色1色のモノトーンにするというものです。
特にこの演出に名前が付けられているわけではないのですが、ここでは分かりやすく「川尻トーン」と呼ばせていただきます。
この川尻トーンは次作の『妖獣都市』でひとりで監督した事で顕著になりますが、今作でもその片鱗が現れています。
電八個人的には非常にカッコイイ演出だと思っています。以下は『妖獣都市』の予告編映像です。川尻トーンがかっこいいのでぜひご覧になってみてください。
タイアップ
今作は非常に力を入れて製作されていたことが分かります。タイアップやグッズなどかなり充実していました。
劇場版アニメだけでなく、再構築したテレビアニメ版も放映され、さらに漫画版も『かぼちゃワイン』の三浦みつるが担当し、講談社から発売されました。
そして、ノベライズもあります。『SF新世紀レンズマン』という事で、劇場版アニメを原作にした小説が講談社X文庫から上下2巻で刊行されました。
さらに同じくX文庫からテレビアニメ版のノベライズも発売されていました。
さらに、いわゆるフィルムコミックなのですが、設定資料集なども含めてムック本。
他にも探せばまだまだあるかもしれません。とにかく人気もあり、いろんな形でレンズマン関連の書籍だけでなくグッズ関係もたくさん発売されていました。
ソフト化について
残念ながら、VHS、LD(レーザーディスク)でのソフト化はされたのですが、DVD以降のソフト化はされていません。
版権の問題なのか採算の問題なのか分かりませんが、動画配信もありません。
著作権的にどうなのか、微妙なのですが、今現在Youtubeで本編がご覧いただけます。
ちなみに原作小説もいまだに人気があり、語られることも多いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回の記事は以上となります。
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